【A World for Numbers】~幼妻たちは仮想世界で嬲られ、寝取られる~ 15話 A World for Numbers①

7月3日、美桜みおが青白い顔で九護くご家への定期報告から帰って来た。

「私のミスです…申し訳ありません………」

「一旦、落ち着こう。」

ソファーに座らせてから抱き寄せて背中を擦る。

「美桜様、ハーブティーとクッキーです。」

「ありがとう、靜流しずる…」

一口、二口、ゆっくりハーブティーを飲んで気持ちを落ち着けていくのが分かる。

「すみません、落ち着きました。」

「うん、本当に大丈夫?」

「はい、大丈夫です。」

美桜はこんなにセルフコントロールが得意だったのか…?

「何があったのか話してくれる?」

「はい…今日は通常の学業報告でしたから、お婆様にだけお会いして帰ってくる予定で……父には合わないように、見つからないように時間を調整したつもりでした。」

「うん、それでも会ってしまったんだね?」

「はい…会話せず立ち去るつもりでしたし、いつもなら無視されるはずでした。」

「うん…」

「今日に限って話しかけてきたんです。【A World for Numbers】に参加するメンバーを教えろと…」

「うん…」

「私と隼人はやとさまが参加することは決めたと言うと、上機嫌な様子で少し待つように言われました。それで持ってきた物がコレです………」


その紙には

・7月5日から12月末までの約6か月はテスト稼働

数属すぞく各家の他、数パーティが参加する

・参加パーティには獲得ポイントによって褒賞がある

・テスト稼働中の一般フィールドでのレベリングは1日2時間まで

・各パーティは毎月2回のパーティ戦への参加が必須

・正式ルール詳細はテスト稼働中に決まる

大体そんなことが書かれていた。

そして裏面には『わざと壊したとしか思えないおもちゃ』が描かれていた………


「美桜のミスは何処にもないよ。直接渡すか、送ってくるかの違いだけだよ。」

「悪趣味なそれは何ですか?」

裏面の絵を目にした秋鷹あきたかさんが珍しく僕たちの会話に入って来た。

「例のVRゲームの追加情報です。」

「それが原因だったのですね。」

「私たちが壊れるまで…というか壊すまで玩ぶつもりのようです………」

「アレを少しでも喜ばせる必要はありません。徹底的に打ちのめしましょう。美桜様と隼人様に手出しする気がなくなるまで。」

晃嗣あきつぐ様への評価は秋鷹さんの中で最底辺をも突き抜けたようだ………



そして、7月5日18時に【A World for Numbers】がサービスを開始したとスマホに通知が入った。

『どうせ、何時に開始しても1日2時間しかレベリングできませんから慌てる必要はありません。』と穂香ほのかが言ったことで20時にリビングに集合しようとなった。秋鷹さんは普段より少し早く自宅に戻って家族で夕食を摂った後に戻って来た。

「じゃあ、始めようか…」

「では皆さま、キャラクター作成で分からないことが有った時は可能な限りスキップして保留してください。合流後に相談して決めましょう。旦那様、奥様、これでよろしいですね?」

「うん、穂香の言う通りにしよう。」

いつも通りにVR機器を起動して認証(ログイン)してアプリを開始すると

『ようこそ【A World for Numbers】の世界へ』と表示され周囲に石壁が立ち上がっていく。



何処からともなく聞き覚えがあるような声がする。

『【A World for Numbers】は剣と魔法の世界です。』

『この世界で過ごすためのチュートリアルを開始しますので、音声ガイドに従って操作してください。』

『左右どちらの手でも結構です。人差し指だけで空中にアルファベットのSを描いてください。』

言われた通りにSを描くと『ステータス』と書かれたウインドーが現れる。


九純隼人 Lv1(風)

HP        66/66

SP        48/48

Str        4

Vit        6

Int        8

Agi        6

Dex       5

Luk       1

スキルポイント 残り3


僕の能力をゲーム内で数値化したようだけど、根拠はあるのだろうか?

『HPが0になると戦闘不能状態となり復活までのカウントダウンが開始されます。』

僕の考えとは関係なく音声ガイドは続けられていく…

『カウントダウンが終了するとシステムが指定した場所で復活し戦線復帰可能となりますが、Lvが高くなるほどカウントが長くなります。残りHPにご注意ください。』

『SPは魔法およびスキル、一部のアイテムを使用する際に消費します。不足していれば発動しませんのでご注意ください。』

『Str、Vitなどの各種ステータスは攻撃力、防御力などに影響します。Lvアップ時に自動的に上昇するポイントとプレイヤーが任意で割り当てるポイントがあります。』

『スキルポイントは魔法、スキルなどを取得する際に使用します。ウインドー内の『スキルポイント』をダブルタップしてください。』

音声に従って操作していくと…【武器】【属性(風)】という文字が浮かんできた。

『【武器】をダブルタップしてください。』

【片手剣】【短剣】【両手剣】【槍】など多くの項目が表示される。

『装備している武器種とスキル習得している武器種が一致している場合、攻撃力上昇などの恩恵が発生します。【武器スキル】は特定の武器種だけで効果を発揮する物、特定の行動に効果を発揮する物などがあります。』

『武器スキルを取得したい場合は後ほど操作をしてください。今は右上の赤いバツ印か右下の閉じるをタップして閉じてください。』

『次は【属性(風)】をダブルタップしてください。』

【風弾】【回避上昇】【雷刃】と3個だけ表示される。

『【風弾】をタップしてください。』

【圧縮した空気の弾を目標に向かって射出してダメージを与える。】

『スキル内容が表示されます。右下の【取得】をタップすることで使用可能になります。が、現在はシステム説明中のため【取得】を無効化しています。間違えて取得してしまった場合でもスキルポイントは返還されません。【武器スキル】と【属性(風)】のスキルポイントは共通です。多くはありませんので良く考えたうえで取得してください。』

『属性(風)スキルを取得したい場合は後ほど操作をしてください。今は右上の赤いバツ印か右下の閉じるをタップしてすべてのウインドーを閉じてください。』

『壁の前まで移動してください。』

『どれでも構いません、武器を1つ手に取ってください。』

目の前にある【刀】を取る。

『空中にアルファベットの i を描いてください。』

i を描くと【アイテム】【装備】2つのウインドーが表示される。

『【装備】をタップしてください。』

『頭、胴、腕、脚、手、耳と武器の欄に分かれています。』

『武器には先ほど手にした武器が表示され、その他は空欄になっているはずです。』

『武器は手にした時点で【装備】が有効になります。』

『次に【アイテム】【革の服】の順にタップして、取り出してください。』

革製のジャケットが手元に現れる。

『【装備】ウインドウに接触させてください。』

ウインドーに触れたジャケットが消え【装備】の胴に【革の服】が表示された。

『【革の服】が装備され【防御力】が【2】になりましたが、隼人様の見た目に変化はありません。』

『このように鎧、兜、籠手などの防具を装備しても、数値上の反映のみで見た目に変化はありません。また、アクセサリー類は【手】と【耳】に1つずつ装備可能です。』

『装備のウインドーを閉じて【アイテム】【赤ポーション】の順にタップしてください。』

すると赤い液が入った瓶が現れる。

『ポーションの使用方法説明のため、腕にダメージを付与します。』

「いっ……」

ピリッとした痛みとともに左腕に切り傷ができる。が、見た目の傷の大きさから考えると痛みはかなり小さかった。

『ポーション瓶を傾けて足に中身の液体をかけてください。』

アナウンスの通り液体をかけるが何も起きない。

『患部ではない部位にポーションをかけても効果は発揮されません。改めて、もう1本取り出してすべてを左腕にかけてください。』

今度は見る間に傷が治っていく。

『ポーションを使用する場合は慌てずに患部に1本すべての中身をかけてください。途中で止めた場合も効果は発揮されません。』

『再び、ポーション瓶を取り出してください。』

右手に先程と同じ瓶を取り出す。

『視界の右端にある格子状の枠内にポーション瓶を接触させてください。』

言われないと気が付かないほど薄く格子が描画されている。そこに瓶を持って行くと吸い込まれるように消えた。

『視界内の格子はアイテムのショートカット欄になっています。格子内のポーション瓶をダブルタップしてください。』

「………。」

上手くできない。瓶を確認しようとすると目を動かしてしまうため、格子も動いてしまうのだ。

『手だけを動かしてみてください。指先で凹凸を感じることができるはずです。』

僕が操作を失敗していることさえ理解されていることに驚かされる。が、アナウンスの通り手だけを動かしてみると確かに指先で凹凸を感じる。その凹凸に振れていると感覚的にそれが【ポーション瓶】だと分かるし、設定していないところは【空】だと分かる。

慣れは必要だろうけど、これは便利だ。改めて手だけを動かして、ダブルタップでポーション瓶を取り出す。

『そのポーションは使用しませんので、ストレージに戻してください。現在、ストレージに収納されている赤ポーション10個は支給品です。』

戻してくださいと言われて少し考えたが、【アイテム】を表示させて瓶を接触させると手元から消える。

『すべてのウインドーを閉じてください。』

『続いて、空中にアルファベットのLを描いてください。』

『ゲームを終了したい時は【ログアウト】をダブルタップしてください。戦闘不能状態になると、このウインドーに【復帰】が追加されます。』

『以上でチュートリアルを終了します。』

『最後に左右の壁にある武器を1つ自由に選んでこの部屋を退出してください。何も持たずに退出してしまうと、何らかの方法で入手するまで素手で戦うことになりますのでご注意ください。
この世界は痛覚を軽減していますので、怖がらずに武器と魔法を駆使して戦ってください。では【A World for Numbers】の世界をお楽しみください。』

手にしている刀を持ったまま部屋を出る。その時、チュートリアルで聞こえていた声は美桜に似ていたのだと気が付いた。



部屋を出た先は待合室のようだけど、先客は盾とこん棒のような物を持った穂香だけだ。

「僕は早い方だったんだね。」

「私も今この部屋に来たばかりです。」

「今のチュートリアルで分かったこと、気が付いたことはある?」

「1、2点ほどです。皆さまが揃ってからお話ししましょう。」

「そうだね。」

ゲーム内なのに穂香はいつも通りのメイド服で違和感がない…のだけど、この服装はどのように選ばれたんだろう?

「お待たせいたしました。」

その声で振り返ると白い道着と弓道袴の美桜が洋弓を手にしていて、なんだか違和感がある。

「隼人さまはデニムにTシャツで…手にしているのは刀ですか?」

「うん、そうだよ。」

動きやすい服装というイメージをしていたけど、さっきの部屋には着替えがなかったし変更することもできなかった。
僕と美桜が出てきてから2、3分も経たずに全員揃った。それにしても美桜以外の女性陣はいつも通りのメイド服、秋鷹さんはスーツだし…

「えっと、皆はその服装で戦うの?」

「隼人様、我々4人はどのような服装でも問題ありません。むしろ学校で課された護衛および制圧訓練ではスーツ、メイド服着用でしたから、慣れていて戦いやすいのです。」

「そう…なんですね。」

『慣れていて戦いやすい』とか意味が分からないし、身を置いている世界が違い過ぎる…

「えっと…私の服装が浮いていますね………」

美桜が自分の服装を顧みて、どうしようか悩んでいるようだ。

「奥様はそのままでも良いと思いますが、あちらにクローゼットがありましたので着替えることも可能です。」

「えっと…着替えてきますね。」

と言って戻って来た美桜は………なぜか制服を着ていた。

「美桜、スカートで大丈夫?」

「この通り中にショートパンツを穿いているので大丈夫です。」

と言ってスカートを捲り上げて中を見せてくれるけど…嬉しいような、余計な事のような?

「美桜様、そこはスカートを押さえて『守ってくださいね』と言って主様に甘えるところです。」

「あ…そうですね。隼人さま、守ってくださいね♡」

美桜の目を見て頷きつつ、靜流が平常運転で安心する。

「では、レベリングを始める前に私が気が付いた点などをお話します。」

穂香が僕たち5人を前に話始める。

「まず、任意でステータスを割り振ることができる点です。ゲームシステムおよびステータスの影響が説明不足な状況ですが……………」


チュートリアルで分かったこと、気になったことなどを穂香が話して僕たちは基本スタイルを決めた。
回復魔法を使える【水属性】に靜流、【地属性】に美桜、秋鷹さんと穂香と4人も居るは安心材料だ。役割としては

近接アタッカー:秋鷹さん、千燁

遠距離アタッカー:僕、美桜

タンクおよび遊撃:穂香、靜流

「秋鷹さん、靜流は槍、千燁は薙刀と予想通りの武器ですね。奥様の弓は滑車が付いているのですか?」

「はい、和弓、アーチェリーなど一度引いてみたのですが、これが良さそうでした。」

「滑車があるので引く力が軽減されるコンパウンドボウという種類ですね。美桜様は良い選択をされたと思います。」

流石、秋鷹さん、馴染みがないような物まで知っている。

「美桜は弓道をやってるから和弓を選ぶと思ってたよ。」

「長いですから持ち歩きに不便ですし、引くための所作も気にしてしまいそうなので止めました。」

「旦那様は刀ですね。剣術の心得があるのですか?」

「いや、他の武器が分からないだけだよ。中学生までは日課で木刀を振らされていたけど、もう10年以上触ってすらいないしね。」

「九純家は家伝の剣術がありますよね?」

「秋鷹さんはそんなことまで知ってるんですね。父と兄は稽古を積んでいますが、僕は家督を継ぎませんし才能もありませんでしたから、素人同然です。」

「中学生までは日課になっていたのでしたら基礎はできているでしょうから、素人扱いはしないで済みそうですね。」

穂香は安心したように頷いているけど…

「いや、素人って言ったばかりだよ?…型稽古だけで立ち合いなどなかったから、不安しかないよ。」

「分かりました。旦那様と奥様はご自身の安全を最優先に行動してください。」

「うん、分かったよ。」

「はい。」

「では、スキルを取得してレベリングを開始しましょう。」

僕は遠距離アタッカーの役割として『攻撃魔法を取得する』ことを告げてスキル【魔法修練 Lv1】【風弾 Lv2】を取得した。


この話し合いで判明したことが2つ。

1つ目、自分のステータスを他者に伝えることができない。他者にウインドーは見えないし、ステータスを読み上げることができない。

2つ目、1つ目と同様に自分の取得スキルの名称、Lvを他者に伝えることができない。ただし、大雑把に攻撃魔法とか回復魔法とかは話すことが可能。それと取得可能なスキルを説明することはできるし、取得して欲しいスキルも伝えることはできる、ということだ。


2026年1月4日 修正

以下コピー内の『チーム』をパーティに変更

その紙には

・7月5日から12月末までの約6か月はテスト稼働

数属すぞく各家の他、数チームが参加する

・参加チームには獲得ポイントによって褒賞がある

・テスト稼働中の一般フィールドでのレベリングは1日2時間まで

・各チームは毎月2回のパーティ戦への参加が必須

・正式ルール詳細はテスト稼働中に決まる

大体そんなことが書かれていた。

そして裏面には『わざと壊したとしか思えないおもちゃ』が描かれていた………

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