【A World for Numbers】~幼妻たちは仮想世界で嬲られ、寝取られる~ 26話 レベリング④

僕たちがログインすると待合室に『第1回パーティ戦報酬』と書かれた大きな宝箱が鎮座していた。横を見ると美桜がいつも通りに制服を着ていて、本人は少し不思議そうに制服を確認している。

皆が揃ったところで「まず、報酬を確認しましょう。」という、穂香の発言に反対する者は当然いなかった。
宝箱を開けるとシステムボイスでの説明が始まる。
『第1回パーティ戦優勝の報酬です。選択可能なアイテムが存在します。』
『①現金100万円もしくはゲーム内通貨10万クレジット』
『②レア武具1個もしくはアンコモン武具2個。武具の種類は選択可能です。』
『以上が選択可能アイテムです。』
『譏�穂のたまご:戦闘中に欠損した部位を即座に回復し、HPを最大値の10%回復します。対象が使用者の半径10m以内で全身を視認できることが条件です。』
『縺��繧�のたまご:使用者の半径10m以内にいるパーティメンバー全員のHPを最大値の30%回復します。』
『以上が報酬です。宝箱内のアイテムを入手せずにパーティメンバー全員が待合室から移動した場合、消滅しますのでご注意ください。』
文字化けを起こしている部分は聞き取ることができないノイズだった。


「現金ですか………」
美桜の呟きが聞こえた。
「私たちに現金は必要ありませんから、自動的にクレジットに決定です。文字化けしている2つのアイテムは靜流に預けます。」
穂香は淡々と決定し、告げる。
「私の意見ですが、レア武具は千燁に武器を選択して欲しいです。アンコモンの武器は街で購入可能ですから、ここで選択する意味がありません。」
「拙の攻撃力は十分に足りていて、現状は上げる必要がないと思います。秋鷹さんか、靜流さんが使う方が良いと思います。」
「攻撃力を均一的にするとパーティ全体が強くなったように見えますが、モンスターが強くなったときに突破できなくなったり、倒すのに要する時間が長くなります。ですから、1番攻撃力があるアタッカーを強化するのが良いのです。」
「分かりました。穂香の言う通りにしましょう。」
「クレジットで5人分のアンコモン武器と解毒ポーションと万能薬を購入します。」
「HP回復用のポーションではないのですか?」
「HP回復の魔法を奥様、靜流、私の3人が使えます。現在、解毒やステータス異常はアイテム頼みですから優先します。」
「分かりました。千燁は宝箱から武具を取得しなさい。」
「承知しました。」
「千燁、武器の特殊効果を確認して、付与されていれば教えてください。」
「はい、えっ……と、【会心ダメージ上昇(アクティブ)をSP消費せずに取得Lv-1で装備者に常時付与する。未取得または取得Lvが1の場合はLv1で発動する。】です。」
「千燁と相性は良さそうですね。当たり、と言って良いでしょう。」
「文字化けしたアイテムが、また出てきましたね。」
美桜が少し怪訝そうに呟く。
「そうですね。文字化けの意味を考えても仕方ないのですが、共通点は『◯◯のたまご』というアイテム名くらいです。」
「現金って欲しがるパーティーがいるのでしょうか?」
「お遊びで参加している数属に関わるパーティーの小遣い、借金を抱えている人を無理やり参加させて返済に充てさせる、そんなところでしょう。」
「なるほど…」
千燁の質問に秋鷹さんが忌々しげに答えた。

「パーティ戦の報酬については、これで良いでしょう。先日の続きでダンジョンの攻略に向かいましょう。」
「出発前に試したいことがあるんだけど、良いかな?」
思いついたことを提案してみよう。
「旦那様、何を試すのでしょうか?」
「クローゼットに行って確認して欲しいんだ。1つ目、今着ている服を脱いでアイテム欄に入れることが出来るのか。2つ目、その状態で新しい服を着ることが出来るのか。その2つを試して欲しいんだ。」
「それは良い案です。着替えを持てるのか確認ですね。」
「私が確認してきます。」
そう言って美桜がクローゼットに入っていった。
「美桜様は思った以上に回復していますね。」
「うん。昨日のことがあったから、このゲームにもっと忌避感を示すかと思ったけれど…それ程でもないみたいだね。」
「はい、そのようです。」
僕は靜流と顔を見合わせる。
「ダンジョンに入ってから美桜の様子を改めて確認しよう。」
「そうですね。」

「お待たせしました。」
数分後、美桜が散歩にでも行くような服装に着替えて出てきた。
「着替えは1着だけ持てました。ですが、下着の替えは持てませんでした。同じ衣服を選べないことが関係しているのかもしれません。」
「美桜、検証してくれてありがとう。」
「まだ、続きがあるのです。アイテム欄に入れた衣服はワンセット、1アイテムとして認識されること。アイテム欄から取り出すと今着ているものが破棄されて、自動的に着用されます。その逆の手順で着ている物を脱いでアイテム欄に入れると、アイテム欄の衣服が自動的に着用されました。」
「奥様、破棄されるというのは、消失してしまうのですか?」
「そうです。何も残らず消えてなくなりました。」
「それでも、着替えを1着は持っていけることが分かったから、それぞれ用意してから行こう。」



『【ダンジョン:南の森~巨木の洞~ 上層エリア】の攻略を開始します。制限時間は現時刻から3時間です。制限時間内にボスを倒すと本ダンジョンはクリアとなります。その後、待合室にクリア報酬の宝箱が設置されます。』

大樹の中のはずなのに、ほぼ平らな床、所々にあるカラフルなタイル…見慣れてしまった、このおかしな通路を僕たちは進む。

先頭は千燁、その後ろに秋鷹さんと穂香、次に僕と美桜、最後尾に靜流。しかも、皆が普段通りの服装なのに武器を手にしている。まだ1週間も経っていないのに、こんな異常を日常の一部として受け入れてしまっている。それに昨夕、あんな目に合った美桜も歩き始めてしまうと、それほど不安を感じていないように見える。
皆がこの異常を受け入れているのか、仕事の一部として割り切っているのか…どちらなんだろう?



晃嗣様がこのゲームを始めさせた理由のいくつかは分かった気がする。
1つ目:美桜と靜流を僕の目の前で辱めること。
1回目のパーティー戦の状況を考えれば千燁も対象に追加されたことだろう。恐らく靜流が言っていたように観戦者への見世物にしている可能性が高い。

2つ目:僕と美桜に無力感を植え付けること。
僕と美桜はこの世界では何もできない、本当に今の僕たちは無力だ。秋鷹さん、靜流、穂香、千燁の4人がいなければ何もできずに殺されるか、凌辱されるだけで終わるだろう。だから僕も美桜も抗おうと、できることを探している。

3つ目:僕たちの心が壊れるまで続けるか、音を上げて晃嗣様に許しを請い願うのを待っているのか…
晃嗣様が満足するか、飽きるまで続けさせられる可能性が高い。
美桜の学業、進学を理由に一時休止にできないだろうか?……いや、恐らく聞き入れてはもらえないだろうな………

千燁の声で我に返った。
「前方からゴブリンです。数ははっきり分かりませんが、10体以上いるようです。」
上層では1度に遭遇するモンスターの数が多い、先程も13体だった。
「1本道ですから、後方は私が警戒します。千燁と穂香の2人で対応しなさい。秋鷹さんはフォローをお願いします。」
「承知しました。」「分かりました。」「了解した。」
僕と美桜は頷き合って秋鷹さんと靜流の中間辺りで周囲を警戒する。こうして見ていると、やはり美桜はこのゲームに対して既に忌避感を感じていないようだ。
迎撃態勢を取った千燁が警戒を促す。
「射手が3体います。後方も攻撃される可能性がありますので、ご注意ください。」
「了解した、私が美桜様と隼人様をお守りするので、千燁と穂香は殲滅に専念しなさい。」
秋鷹さんが僕たちの目の前まで来て槍を中段に構える。だけど、槍で放たれた矢を防ぐことなんて可能なのだろうか?
「秋鷹、無理はしないでくださいね。」
「美桜様、お任せください。1、2本なら防いで見せます。」
「美桜、念のため回復魔法を待機させておいて欲しい。僕は射手を牽制するために魔法を使うよ。」
「そうですね、分かりました。」

ベタベタという足音を立て、ギャアギャァと騒ぎながらゴブリンが近づいて来るのだが、やはり遅い。
その間に僕が風弾を、美桜が回復魔法を待機させていた。ゴブリンたちは乱雑に近寄ってきて各々が勝手に相手を見定めて攻撃を繰り出そうとする。そんな中、弓を持った3体だけが少し後ろで攻撃態勢に入ろうとしたのを見た僕が魔法を発動させると1体が大きく仰け反ってそのまま霧散する。射手の残りが2体、近接攻撃だけの穂香と千燁では苦戦するかもしれない、そう思ったのだけど…
「千燁、射手を先に始末してください。」
「承知。」
間を縫って射手に向かう行き掛けの駄賃にと、軽く振られた薙刀で数体のゴブリンが霧散していく。
6体のゴブリンを難なく相手取った穂香と、ボスすら歯牙にもかけない千燁、その2人が苦戦などする訳もなかった。

「射手が更に増えると面倒ですね。」
「まあ、盾を持っているのが私だけですから、分かりきっていた事ではあります。」
穂香と千燁のやり取りに美桜が問いかける。
「なぜ、穂香だけが盾を選んだのですか?」
「それは…私以外の3人が盾を持つと思えなかったからです。」
「拙は薙刀以外だと、じょうと刀しか扱えません。」
「そもそも盾を持つ流派がほとんどないのです。ですから、私は盾という発想すらありませんでした。穂香は我流で盾を使っているはずです。」
「秋鷹さんの仰る通り、我流です。繰り返し戦闘が行われるゲーム内では、1度だけ奥様と旦那様をお守りすれば良い訳ではありませんから、盾があった方が良いという判断でした。」
「私は盾という、不慣れな物を持つ考えはありませんでした。だけど、穂香は良い判断をしたと思います。」
正直、僕にも盾という選択肢はなかった。穂香が周囲の人物観察と状況判断に優れていることがよく分かる。
「射手が多いと判断したときは穂香が美桜様と主様を守れる位置に入りなさい。」
「それでは連係に微妙な齟齬が発生するかもしれません。基本的に私と千燁の2人で先陣に立ちましょう。その後ろに穂香と決めた方が迷わなくて良いでしょう。」
「秋鷹さん、戦闘が増えそうですが大丈夫ですか?」
「疲れたときは言いますので、変わってください。」
肩の力が抜けた言い方が、いつも通りの秋鷹さんらしくて美桜と小さく笑い合った。

それから行われた数回の戦闘にも射手が何体かいたけれど、交戦開始と同時に千燁が間隙を突いて真っ先に射手を始末していたので、その驚異を感じることはなかった。「ゴブリン程度なら千燁だけで十分ですね。」なんて軽口を叩きながらも秋鷹さんはゴブリンを確実に仕留めていた。



部屋という感じはしない、ただ広いだけ………柱もほとんどなく、壁も見えない。足を踏み入れた瞬間に空間が広がったように視界が開けた。
「恐らくこのダンジョンのラスボスがいると思います。」
「私と穂香が美桜様と主様の護衛、秋鷹さんは取り巻きの対処をお願いします。千燁がボスの対処、可能な限り早く倒しなさい。」
「承知しました。」
簡単な取り決めだけで、とりあえず僕たちは直進する。
既に50m以上歩いたはずなのに左右は当然としても、前方にも壁は見えてこない、樹の中とは思えない広さだ。
「ご覧の通り、壁や柱と言った背負うものがほとんどありませんので、全周囲の警戒が必要です。戦闘が始まりましたら、奥様と旦那様は周囲の警戒とご自身を守ることを最優先にしてください。」
「はい、分かりました。」
「分かったよ。」
昨夕のようなミスは、もうしたくない。

それからしばらく歩いて漸く前方に壁、その手前に黒い靄が見えてきた。ただ、その靄は1つだけではなく左右に1つずつ同じような靄を従えていた。
「拙が真ん中と右を処理します。秋鷹さんは左をお願いします。」
「了解、遠慮せずに左もって良いのですよ?」
「両方の処理が終わっても残っていたら、いただきます。」
先頭を進む千燁と秋鷹さんと靄の間が10m程度になると収斂が始まる。
『【巨木の洞上層エリア ボス戦:ホブゴブリン】を開始します。』
真ん中の靄から現れたのは昨夕に穂香が【倒せないイベント用Mob】と言っていたモンスター、左右からはリーダーゴブリンが1体ずつが見え始める。

「左右に少しずつ離れた場所にも靄があります!」
美桜の声で慌てて周囲を見渡すと左右に1つずつ、そこからもリーダーゴブリンが現れる。
「穂香は美桜様と主様の護衛に専念しなさい。右側のボスは私が対処します。」
計5体のボスモンスターが見えるのと同時に、わらわらとゴブリンが何もない空間から湧き出してくる。
「靜流、パーティ全体を回復させるアイテムを僕に貸して!」
走り出そうとする背中に声を掛けると、靜流が振り向くのと同時にアイテムが僕の胸を目掛けて飛んでくる。
「主様、お任せします!」
「近づいて来るゴブリンは私が対処します。」
メイスと盾を構えて穂香が数歩前へ出る。
「周囲の警戒は僕がするから、美桜は射手の数を減らすんだ。」
「はい、隼人さま。」
返事の直後には風切り音とゴブリンの頭や胸に矢が突き立つ音が聞こえ始める。

すべてのボスモンスターたちは何の行動も起こさず、靄を薄っすらと纏ったままで、秋鷹さんと千燁の攻撃は空を切りボスに有効なダメージを与えられない。
「初期ダンジョンでは複雑なギミックはないはず…多分、そういうことでしょうね…」
穂香はブツブツと呟いたあと声を張る。
「秋鷹さん!そこの3体は千燁に任せて左側のボスの対処をお願いします!」
「了解した。千燁、ここの3体は任せます。」
「承知!」
秋鷹さんはボスに背を向け、周囲のゴブリンを蹴散らしながら靜流と逆方向のリーダーゴブリンへ向けて走り出す。
「流石にちょっと多い…」
10体以上のゴブリンに囲まれた穂香は弱音を吐きつつ、向かい来るゴブリンの攻撃をメイスで受け、盾を使って別の個体にぶつけるようにふっ飛ばす。幸いと言うべきかゴブリンの射手は弓が下手らしく、ほとんどの矢が僕らを掠めもしない。

後方にはゴブリンがいないことを確認した僕は刀を抜きつつ、美桜を守るため少しだけ前に出る。
「美桜、少しだけ下がって撃てる?」
「はい。」
千燁はボス3体の様子を見ながら、ただの一振りでゴブリン1~3体を霧散させる。死角と思われる後方から近づく個体にも振り向きざまの一撃がお見舞いされる。10体近いゴブリンに囲まれても千燁には、まだまだ余裕がありそうだ。

そして、秋鷹さんと靜流が左右のリーダーゴブリンに近づいたとき、5体すべてのボスモンスターが靄を振り払って攻撃体勢に入る。
「せいっ!」
リーダーゴブリンが大剣を振り被った瞬間に秋鷹さんの2連突きからの薙ぎ払いがクリーンヒットする。だが、そんなことはお構いなしに大剣が振り下ろされる。
ガチィっ!と床のタイルを砕き飛ばしながら大剣が床にめり込む。
「っ!っとと…危ないですね。こいつらには痛覚がないんですかね。」
言葉とは裏腹に焦った様子もなく秋鷹さんは槍を引き寄せる。
「…っ……ふっ!」
初激を躱しながら繰り出された靜流の槍がリーダーゴブリンの腹に突き刺さるが、モンスターはそれを気にした様子もなく続けて攻撃が繰り出される。引き戻した槍を構え直し、リーダーゴブリンの攻撃を捌きつつ2、3回目と反撃を入れるが、それでも倒しきれない。
「思っていた以上にしぶといですね。」
竹箒を振り回して遊ぶ小学生のように薙刀を軽々と扱う千燁はスカートを翻しながら、3体のボスの攻撃をいなしつつ取り巻きのゴブリンを霧散させ続けている。
「倒しても倒しても取り巻きが沸き続けますね……この数で無限沸きって酷いでしょ!千燁、早くボスを倒してください!」
「雑魚が多過ぎます。この数を捌きつつ、デカイのに有効打をいれるのは流石にちょっときついです。」
穂香は常に10体以上のゴブリンと攻防を続けているのだが、千燁の周りにも3体のボスと10体以上のゴブリンが見える。それぞれのボスの真ん中辺りから沸き続けるゴブリンは穂香と千燁に向かっていく。そのせいで2人はゴブリンを倒しても倒しても負担が減らない状況だ。
僕の魔法は準備にも時間がかかるし、連続使用もできないからこの状況に有効的とも思えない。しかも、警戒も怠れないから僕には現状を打開する手立てがない。
「美桜、千燁の近くにいるゴブリンを撃てる?」
「少しでもずれると千燁に当たってしまいそうです。」
「分かった、無理はしないで良いよ。」
「千燁、そちらに向かいます!」
まるで僕と美桜の会話と聞いていたかのようなタイミングで、リーダーゴブリンを倒した秋鷹さんが走り出した。

「きゃっ!」
「美桜、ごめん。驚かせたね。」
美桜の足元のタイルに突き立てた刀を抜いた場所には小さな液溜が出来ていた。
「スライム…ですか?」
「多分ね。」
「ありがとうございます。」
「今の僕に出来ることは、これくらいだよ。」
改めて周囲を見渡す。
靜流が相対するボスのHPは残り50%程度、千燁が相対するボスはほとんど無傷だ。だけど秋鷹さんがボスを1体倒したお陰かゴブリンが沸き出す数が減っている。

「千燁、お待たせしました。周りの雑魚は私が対処します。」
ボスに専念できるようにと秋鷹さんがゴブリンどもと千燁の間に割って入る。
「お願いします。では、速攻で終わらせます。」
その言葉と共にボスの攻撃を打ち払った千燁の腰の周りを赤く光る2本の輪が現れ、1~2秒で消えた。
その直後に一振り、二振り…無造作にも見える斬撃で2体のリーダーゴブリンは霧散したのだが、千燁はホブゴブリンに背を向けてしまっている。
『オお゙ぉぉぉオッぉ!』
渾身の一撃が叫び声と共に千燁の脳天目掛けて剣を振り下ろされる。
反転しながら振り上げられた白刃が振り下ろされたホブゴブリンの腕を切り飛ばし、そのまま止まることなく弧を描いて繰り出された斬撃が胴を薙ぐ。
「靜流さん、そちらも拙が対処します。」
結果など見なくても分かっていると、千燁は走り出す。



『レベルがあがりました。ステータスポイント1とスキルポイント1を獲得しました。』
『【巨木の洞上層エリア ボス戦:ホブゴブリン】が討伐されました。本ダンジョン攻略完了の初パーティーです。』

「…はあぁ………きっっつ。初パーティって当たり前でしょ……調整ミスってるわ……こんなのクリアできるパーティがおかしい!」
穂香がドカッと座り込み天井を見上げてボヤく。
「このLv帯で他のパーティがクリアできると思えないわぁ………」
これが穂香の素の口調なんだろう。
「穂香、質問があります。」
「靜流?なんでしょうか?」
穂香はカクンと首だけを曲げて答える。
「私と千燁の攻撃に差があり過ぎると思うのですが?」
僕も同じような疑問を抱いていた。
「あぁ…それは装備とステ、スキルの差です。現状だと装備とスキルの差が大きいと思います。今後はもっと差が開きます。」
「どういうことですか?分かるように説明しなさい。」
「靜流は攻撃用のスキルを取得してませんよね?」
「……まったく、ではありませんが、攻撃のスキルは基本的に取得していません。」
「千燁は攻撃用のスキルしか取得していませんよね?」
「はい、穂香さんの仰る通りです。」
「そのスキルの差にレア武器とアンコモン武器の差が加わりますから当然です。」
「………。」
靜流は何かを考えるように無言で腕を組んで天井を見上げる。
「…なるほど………これがゲームの理不尽という事なのですね。」
「そうです。秋鷹さんと千燁がアタッカー、靜流と私はタンク、遊撃とヒーラーを兼ねる、という前提でステとスキルを構成しますから、攻撃力の差は開く一方です。」
「なるほど、おおよそ理解しました。しかし、ステとは何ですか?」
「え?………」
「ステとは何ですか?」
「ステータスの略です。」
「なるほど……穂香は皆が分かっているかのように専門用語を使うのを止めなさい。」
「はい、そうですね…分かりました。それと皆さん今回のボス戦で分かったと思うのですが、攻撃力を上げるために靜流と私の武器を更新するのは後回しで良いです。そのうち雑魚すら一撃で倒すことができなくなります。」
「なるほど、そうですね。私と穂香は雑魚の引き付け役になるということですね。」
「靜流の理解が早くて助かります。」
「あの、せっ……えっと、あ…穂香……」
美桜がひょこっと手を上げて顔を赤らめている。
「奥様、何でしょうか?」
「その、雑魚でも簡単に倒せる方が良いのではないでしょうか?」
「確かにそうですが、探索中は秋鷹さんと千燁が居ますし、奥様と旦那様も攻撃力は上がっていくはずです。ですので、私と靜流の武器を更新するのは最後で良いのです。」
「はい…」
「その代わり、鎧など防具の更新は優先させて下さい。」
「分かりました。」
「では、アイテムを回収してから待合室に戻りましょう。その後、新しいダンジョンを探して、今日は終わりにしましょう。」
行き止まりの壁に現れた赤い扉を開けて僕たちはこの場を後にした。

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