『今日浩二さんと会うことになったから夕飯は要らないよ。また帰る時に連絡します。』
夫の智から連絡が入ったのはついさっき。ちょうど買い物を終えたところだった。
(もう、夕飯用に色々買っちゃったのに…。)
ぶつぶつ独り言をいいながら夫にメールを返した。
23時をまわったころ夫が帰宅した。
私「おかえりー。浩二さん元気してた?」
智「ただいま、うん、元気そうだった。店もようやく軌道に乗ってきてるみたいだよ。」
浩二さんは私と夫の元上司。結構年上だけど大人の魅力があって仕事も出来たから女子社員からは結構人気があって私も少し憧れていたことがある。今は退職して自分の店を開いているらしく、夫もオープンの手伝いに駆り出されていた。もう少し浩二さんの話でも聞こうかなと思ったとき夫が話し出した。
智「そういえばさ、うちの会社の三井さんって覚えてる?」
(三井さん…。よく知っている名前…。)
私「三井さん?うん分かるよ。デザイン部の人だよね。辞めたんじゃなかったっけ?それがどうしたの?」
智「浩二さんが前に飲んだことあるらしいんだけどその時麻琴の話題が出たんだって。」
私「へぇそうなんだ。」
智「三井さんがあの子可愛いくていい子だって褒めてたらしいよ。結構話したことあるの?」
……何故急にその人の名前を出してきたのか私は内心気が気じゃなかった。つい何時間か前にもその人からメールがきていて返信するべきかどうか頭を悩ませていた所だ。
三井『久しぶり~!元気?夫婦生活うまくいってんの?会えなくなっちゃって淋しいよ~。今度飲みにでも誘っていい?あっそういえばこの間転職した会社が人手不足だから良かったら働いてみない?』
友達からなら返信するのも簡単な内容だけどこの人はそうじゃない。結婚前まで働いていた職場の人で、かつて私が浮気して身体を許した相手。夫は私が浮気したことは知らない。でもメールの相手をあまりよく思ってないから下手に相談もできなかった。その人の話題を出されて私は動揺を隠すのに必死だった。
(もしかして何か知ってるの?)
私「まああの人って誰にでも話しかけるからね。そんなことより今日お義母さんから電話きてね。………」
適当な話題ではぐらかせようとしたけどうまく誤魔化せたかな?そのあとは三井さんの話をしてこなかった。
今日急に夫が三井さんの話をしてきたのを聞いたら下手にメールを無視して怒らせれば誰かに言いふらしたりするかもしれないと思って当たり障りなく返信しておくことにした。
今日は夫と元上司のお宅に招待されている。あちらのご夫婦と私たちでお酒でもって誘われたらしい。私は浩二さんの奥さんとは面識がないので少し緊張していた。
浩二「麻琴ちゃん久しぶりだね。」
ご夫婦が出迎えてくれた。
私 「ご無沙汰してます!すみません夫婦でお邪魔しちゃって。」
浩二「全然だよ。結子も久しぶりにお客さんきて喜んでるよ。なあ結子。」
結子「はじめまして、聞いてた通り可愛い奥様ねぇ。じゃあキッチンで盛り付け手伝ってもらおうかな?」
私 「はい、お邪魔します!」
結子さんは女の私から見ても綺麗でスタイルも良くて羨ましいくらいだ。料理を手伝うと言ったものの結子さんはとても手際がよくてほとんど役に立てなかった。出来た料理をリビングに運ぶと男性2人はもう飲み始めている。
結子「じゃあ私たちも頂きましょうか?」
私 「はい、いただきます。」
席に着いて部屋を見渡すと改めて大きな家だなぁと思った。
私 「すっごく素敵なお家ですよねー。私もこんな家に住みたいなぁ。」
結子「古い家をリノベーションしただけだからあちこち傷んでるし不便なところもあるのよ。夏なんかエアコン無しじゃ暮らせないしね。」
智 「でも流石ですよね。内装かなり凝ってますよね。」
浩二「まあな、そこには1番金かけてるよ。」
私 「うちも早く家買おーよ。アパートだと好きに出来ないもん。」
智 「じゃあ頑張って貯金しないとな。節約は任せた。」
私 「いっぱい稼いでくれれば話は早いんだけど。」
嫌味っぽく言ったからか夫は黙ってしまった。夫も仕事はできる方だった。だから浩二さんにも信頼されて可愛がってもらっている。あとで謝っておかないとなぁ。
お酒もだいぶすすんで私も結子さんとの気まずさはもうなくなっていた。浩二さんも結子さんもリードがうまいからだろう。ふと結子さんを見ると少し顔が赤くなっててエロチックな雰囲気たっぷりで子供っぽい自分がなんか恥ずかしいくらいの魅力だ。夫が目線を結子さんに送ってるのがちょっと悔しかった。そんなことを考えていると浩二さんが、
「今日泊まっていったら?」と言ってくれた。
たしかにこれから帰るのは面倒だったけど夫は明日珍しく日時出勤だと言ってたのでお断りしなくては。
浩二「明日日曜日だしいいだろ?」
結子「そうだね。結構飲んでるから心配だし、部屋はあるから遠慮しないで大丈夫よ。」
私 「でも主人ご明日仕事なんですよ。」
智 「そうなんですよー。まあ午前中だけなんですけどここからだと遠いんで。」
浩二「じゃあ麻琴ちゃんだけ泊まれば?1人で寝るの怖かったら一緒に寝てあげるよ~笑」
結子「おじさんは1人で寝てもらって私と女子トークしようよ。」
さすがに初対面の人と一緒に寝るのは気が引ける…。私は智に助け舟を出してもらおうと視線を送った。
智 「じゃあそうさせてもらえば?明日仕事終わったら迎えにくるよ。」
浩二「うん決まり~。」
(もう、なんで勝手に決めちゃうのよ!)
いつもなら一緒に帰ろうと言ってくれるのに…。少し腹が立ったけど仕方ない。
麻琴「じゃあそうさせてもらおっかな?ホントにいいんですか?」
結子「もちろん!お風呂も一緒入っちゃう?笑」
結子さんが嬉しそうでよかった。
「じゃあ明日迎えに来るから」そういって夫は帰っていった。
なんとなく親戚の家にひとりで泊まった時のことを思い出して少し寂しい気持ちになってしまった。夫が帰ったあと結子さんと2人でお風呂に入ることになった。さすがにお断りしたけどどうしてもって言われたしお風呂を見たらすごく広くてこれならいいかって思って一緒に入った。
私 「こんだけ大きいともう外のお風呂行かなくてもいいですねー。」
結子「でも洗う大変だよ。ひとりだと寂し〜く感じるし。普通のお風呂でいいのになぁ。」
私 「じゃあ浩二さんがお風呂好きなんですか?」
結子「うーん、何人かで入るの想定して作ったからね。」
何人か?あぁ、もしかしてお子さんの事かなぁ…。悪いことを聞いてしまったと反省…。
ガチャッ
「俺も入れてーー笑!」
扉が急に開いて浩二さんが乱入したので私はびっくりし過ぎて心臓が飛び出るかと思った。
結子「ちょっと!なにやってんのよーー!」
私 「きゃー」
浩二「いいだろー別に。ねぇ麻琴ちゃん?」
結子「ばかじゃないの?もう…。はい出てって!」
そう言われて浩二さんは寂しそうに出ていってしまった…。
私 「あーびっくりした笑。」
結子「ホントごめんねぇ、若い後輩が来てくれたもんで嬉しかったんだと思う笑。」
浴槽の縁に腰掛けてた私は思いっきり見られちゃったし、思いっきり見てしまった…。
お風呂から出ると夫からメールがきている。
智『家に着いたよ。飲み過ぎて迷惑掛けないように!明日すぐ迎えに行くからね。おやすみ。』
夫は明日仕事なのにお風呂ではしゃいでしまって少し罪悪感…。いつもメールは素っ気ないと言われてしまうので少し甘えたメールを送っておくことにした。
『おかえり!さっきお風呂出たところだよ。素敵なお風呂だったー。明日お仕事がんばってね♡』

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