湯船に浸かるとまた、いろいろなことが頭を駆け巡る。このまま、本当に島村と深い関係になってもいいのか。
ふと部屋を仕切っている壁の硝子の方に目をやる。
硝子は一面鏡張りになっていることに気がついた。目を凝らすと微かに部屋の中の様子が見える。
もしかして、島村に見られているのでは?思わず、湯船の中で胸を押さえる彩。
見られていると思うと急に恥ずかしくなった。
彩はタオルを取ると前を隠しながら湯船を出て、風呂場の電気を消した。
部屋の様子が硝子に浮き上がる。
その瞬間、硝子越しに島村と目があった。
やはり見られていた。彩はそのまま脱衣所へ出るとドアを閉めた。
恥ずかしさが込み上げてきた。ずっと自分の身体が嫌いだった。
小林からはエッチな身体と言われた。嫌だった。
近寄ってくる男達はみんな自分の心ではなく身体が目当てのような気がした。
島村はどうなのだろうか?
やっぱり自分の身体が目当てなのだろうか?
硝子越しに見た島村の目を思い出した。
雄の目をしていた気がした。 ○○(俺)はどうだったか。
一度自分が拒むとずっと我慢してくれた。
自分のことを本気で好きでいてくれた。
距離が開いただけで脆くもくずれてしまったけど、自分はもう少しがんばるべきだったのでは?
こんな気持ちで島村に抱かれてはいけない。
彩は下着を付け、服を着ると来たときの格好で脱衣所を出た。
衣服を整えて出てきた彩を見て、島村は驚いた。
島村「どうしたの?」
彩「島村さん、ごめんなさい。ここまで来てしまったけど、私、未だ島村さんとお付き合いできない」
島村「どうして?こんなに好きなのに!」
島村は彩に近づき抱き寄せると強引にキスをしようとする。
彩(拒みながら)「本当にごめんなさい」
島村から離れる。
島村「ここまで来ておいて、ふざけんなよ!」
島村は怒り出した。
彩「本当にごめんなさい」
何度も謝る彩。
島村(怒りながら)「いいよ!その代わり口でしてくれよ!」
彩「えっ?」
島村「この前も手でしてくれただろ。治まりつかねーよ!」
島村はジーンズのファスナーを下げると半勃ち状態の愚息を取り出した。そして強引に彩の手をとると自分の愚息へと導いた。
島村の雄を感じて、彩は嫌だったが、中途半端な気持ちでここまで来てしまった自分が悪いと思い、島村の愚息を手て包むとゆっくりと動かし始めた。
「ふうー」
島村の息遣いが聞こえる。愚息が固くなってくるのがわかる。
このまま逝かせてしまおうと動かすテンポを速めていく。
島村「ちょっと待てよ!」
逝きそうになったのか、彩の手を押さえ、動きを止めた。そして、体をずらして彩の顔の前に愚息を突き出し、咥えるように催促する。自分の性欲を押し付ける島村が嫌だった。
島村「いいだろ。これで最後にするから!」
彩は早く帰りたい気持ちだった。早く終わらせるために彩は島村の愚息を口に含んだ。
島村「おおっ」
思わず声を上げる。動かすたびに島村の愚息はさらに固くなる。
島村は彩のTシャツを捲り上げるとブラをの上から彩のおっぱいに手を伸ばした。
彩「いや」片手でTシャツを押さえて抵抗するが、島村に手を掴まれる。さらに島村はブラの中に手を突っ込み、彩の豊満なおっぱいを露わにする。
島村は両手で彩のおっぱいを掴みながら口の中で果てた。
彩は洗面所で島村の体液を吐き出すと何度も何度も口を濯いだ。
果てたときの満足げな島村の顔が嫌だった。やっぱり、自分の身体だけだったのか。
悲しくなった。
二人はホテルを後にすると駅で別れた。
もう二度と島村とこのような関係になることはないと思った。
家に帰ると○○(俺)に無性に会いたくなった。
電話を掛けた。
「お客様のおかけになった電話は電源が入っていないか、電波の届かないところにあるためかかりません・・・・・」
これが運命かと思うと、また悲しくなった。
渋谷のバーのカウンター。
彩と渡辺(バイト先の俺の同級生)とが飲んでいる。
渡辺「じゃあ彩ちゃん、○○と別れてからずっと一人なんだ」
彩「なかなか、踏み切れなくて」
渡辺「じゃあ、俺と付き合おうか?」
彩「またまた、冗談でしょ?」
渡辺「本気、本気。前から俺が彩ちゃんのこと好きなのしってただろう?」
彩「ごめん・・・・・」
渡辺「まだ、○○のこと思ってるのか?」
彩「たぶん・・・・・」
渡辺「○○は幸せもんだよな。彩ちゃんからこんなに想われて!」
彩「でも、○○君、九州で好きな人できたみたいだから」
渡辺「そんなの関係ないよ。俺みたいに何度でも当たって砕けろだよ。10年後彩ちゃんが一人だったら、もう一回チャレンジするよ!」
彩「渡辺君、ありがとう。なんか勇気が出てきた」
渡辺「なんなら、俺から○○に伝えとこうか?」
彩「ううん。自分でがんばる。自分で勇気振り絞って、努力してみる」
渡辺「そうだな。そうしないと幸せって掴めないものだよな」
彩「うん。そう思うから」
場面があちこち飛んで申し訳ないです。
渡辺と俺の電話に戻る。
渡辺「だとさ!」
俺「・・・・・」
渡辺「お前は彩ちゃんのことどう思ってんだ」
彩の容姿、彩の仕草、彩の笑顔・・・・思い浮かべる。
渡辺「彩ちゃんから電話あったら、きちっと受け止めろよ!」
俺「・・・・・渡辺、ありがとう」
渡辺「お前に礼を言われる筋はねーよ。俺は彩ちゃんに幸せになってほしいだけだ」
俺「ありがとう」
渡辺「じゃあな」
世の中知らなくていいことなんて山ほどあるんだな。
渡辺からの電話があってから、落ち着かない日々が続いていた。渡辺の電話で、彩が未だ俺に対する思いが残っていることを聞いた時は正直うれしかった。
その一方、彩が一人でいた時期に俺は智美と仲良くしていたことに対する後ろめたさもあった。
俺は彩ともう一度やり直すことができるのだろうか?
また、同じ誤ちを繰り返すのではないか?
智美と別れてから、恋愛に自信を失いかけている自分がいた。そう考えながらも、彩の電話を待っていた。
彩と会って話がしたいと思った。その思いは、日が経つにつれ、強くなっていった。
渡辺の電話から2週間が過ぎようとしていた。
彩からの電話は未だなかった。
俺は不安になりかけていた。振り返ってみると、この2週間、彩のことばかり考えていた。
もしかして渡辺に踊らされていたのでは?渡辺を疑ってみたりした。
自分から彩へ電話をしようかとも思ったが、もし渡辺が俺に話したことがでたらめだったらと考えると怖くてできなかった。
いや、渡辺を信じて待とう。
疑っては信じる。その繰り返しだった。
疑っている器の小さい自分が嫌で渡辺にも電話できずにいた。
そしてついには、渡辺と彩ができているのではと考え始めた。よくよく考えると単なる友人である渡辺に島村とのことや今の自分の気持ちを素直に話すものだろうか。しかも島村の件に至っては、ホテルに行ったことまで話をしているのである。そう考えると彩と渡辺がもっと深い仲であると考える方が自然のような気がした。
そうしているうちに1か月が経った。
未だ彩からの電話はない。俺の彩への思いは限界まで来ていた。
渡辺の電話を無かったことにしてしまおうとも考えたが、俺の心の中はもうすでに時遅しの状態だった。
気がついたら、俺は羽田行きの飛行機の中にいた。渡辺には余計なことは言わず、ただメールで出張で東京に行くから飲もうとだけ連絡したら、OKと返ってきた。
もちろん出張はうそだが・・・・・
久しぶりに渡辺と新宿で会った。
ちなみに渡辺は大手商社のエリートサラリーマンである。会社の話などをした後に俺の方から切り出した。
俺「そういえば、彩から連絡ないんだよな。渡辺、なにか知ってるか?」
渡辺「いっいや・・・・・」なんか歯切れが悪い。
俺(ちょっと強い口調で)「お前、彩とあれから会ったか?」
渡辺「あっ1回だけな」
俺「お前、なんか隠してるだろう!」
強く迫る俺にたじろぐ渡辺。
渡辺「○○(俺)、すまん!」
渡辺はこれまでのことを話しだした。
渡辺は俺に連絡した後、彩に電話をしてそれを口実に呼び出した。
都内の公園の駐車場。渡辺の車の中。
渡辺「彩ちゃん。○○にはもう電話しない方がいいかもしれない」
彩「えっ?どうしてなの?」
渡辺「彩ちゃんが傷つくのは忍びないから」
彩「○○君、何か言ってた?」
渡辺「あいつ会社の娘と付き合ってて、もしかしたら結婚するかもって言ってた。だから俺、彩ちゃんの気持ちは○○には伝えなかった」
彩「・・・・・そうなんだ」
渡辺「ごめん。力になれなくて」
彩「・・・・・渡辺君のせいじゃないから」
渡辺「ごめん」
彩「もう誤らないで、悲しくなるから」
助手席でうつむく彩。長いまつ毛が少し濡れている。
白いサマーセーターを押し上げた胸。網目から薄いピンクのブラが透けている。そして、デニムのミニスカートから伸びた素足。
色っぽかった。ごくっと生唾を飲み込む渡辺。
渡辺は彩を自分のものにしたいと思った。
彩「やっぱり、これも運命なのかな・・・・・」
ぽつりとつぶやき、顔を上げた彩。瞳がウルウルしている。
渡辺は顔を近づけると唇を重ねた。
渡辺「ごめん」
彩「いいの。もういいの」
再び、唇を重ねる。
そして、手を胸に添えて彩の胸の感触を確かめる。
渡辺「触ってもいい?」
彩「・・・・・」
少し強めに揉んでみる。
渡辺「見てもいい?」
彩「・・・・・」
サマーセーターの裾をまくり上げる。薄いピンクのブラが露わになる。
渡辺「外すよ」
彩「・・・・・」
渡辺の手がブラのホックに手が掛る。
彩「渡辺君!ごめん」
渡辺を押しのける彩。
彩「こんなんじゃだめだよね。私、やっぱり○○君のことが好きだから」
渡辺「・・・・・」
彩「こんな気持ちじゃ。渡辺君にも失礼だよね」
渡辺「・・・・・俺、彩ちゃんのことすきだからかまわないけど」
彩「渡辺君、ごめん」
彩は助手席のドアを開けると車を飛び出して、駆けて行った。
そんな彩を渡辺は茫然と見送った。
それ以来、彩とは連絡を取ってないらしい。
再び、新宿の居酒屋。
渡辺「ほんとにすまん!」
俺「ちょっと腹立つけど、いいよ。お前が彩のこと好きだったのは俺も知ってるから」
渡辺「ほんとにすまんな」
俺「お前のおかげで、俺も彩のことが今でも好きなのがわかったから」
渡辺「本気か?」
俺「ああ、マジだ」
居酒屋を出ると俺は勇気を振り絞って彩に電話を掛けた。
俺「久し振り!彩」
彩「えっ、どうして?」
俺「今からそっちの近くまで行ってもいいか?話したいことがある」
彩「・・・・・今、どこにいるの?」
俺「東京に来てる。少しだけでいいから時間をくれないか?」
彩「うん。わかった」
それだけ言うと俺は彩の実家の最寄りの駅へと向かった。
彩に会いに行く電車の中で俺はこれまでの自分の人生について振り返る。
バイト先での彩との出会い。
彩の就活。そして内定。海外研修旅行。小林。
彩の就職。島村。
俺の九州への異動。智美との出会い。
智美の過去。智美の身体を駆け抜けていった男達。
尾崎。伊藤。大橋。
平山の配属。
そして智美との別れ。
渡辺からの電話。
1つ1つの出来事が、今に繋がっている気がした。
そして今、俺は再び彩のところへ向かっている。
彩は俺のことを受け入れてくれるだろうか。
受け入れてくれなければ、それも運命だろう。
今は自分の気持ちに正直に行動しよう。そう決めた。
そんなことを考えているうちに駅に着いた。
人波を掻き分けて改札へと向かう。改札の向こうに彩が立っていた。
約1年半ぶりの再会。彩は髪を茶色に染めて少し大人びて見えた。
二人、何も言わず、じっと見つめあう。
彩の目が少し潤んでいるようにも見えた。
俺「久しぶり!」
右手を差し出す。
彩「ほんとだね」
右手を差し出して、俺の手に重ねた。
少年のころの気持ちに戻ったようで、ドキドキした。
俺「ちょっとだけ、時間くれる?」
彩「うん」
そう言うと俺は彩の手をとって歩き出した。
駅の近くの公園のベンチ。この公園は、付き合いだしたころよく行ったところだった。
俺「元気だった?」
彩「うん」
そんな通り一遍の会話を続けた。なかなか言いたい一言が口に出せない俺がいた。
時間はあっという間に経った。俺の新宿へ戻る終電の時間が迫っていた。
彩「そろそろ行かないと終電乗り過ごしちゃうよ」
俺「ああ」
彩「今日は来てくれてありがとう。久しぶりに話せてうれしかった」
話したいことは何ひとつ言えてないのにこのまま帰るのか!
俺、勇気を振り絞って「彩!」
彩「なに」
俺「出張で東京に出てきたなんて嘘で、本当は彩に会いに来たんだ」
彩「えっどうして?」
俺「電話で渡辺から彩のこと聞いて、じっとしていられなくて!」
俺はこれまでのいきさつを彩に話した。
「○○はこれからどうしたいの?」
彩が聞いてくる。
「彩とやり直したい!彩が好きだ」
俺ははっきりと伝えられた。
彩、少しだけ考えて、
「もう、終電の時間だから、○○君戻って。明日私が新宿に行くわ。その時、返事してもいい?」
新宿へ戻る電車の中。俺は彩とのやり取りを振り返った。
伝えたいことは伝えることができた。だが、その場で返事がもらえることを期待していただけに、少し肩透かしをくらった気がしていた。そう考えると不安になった。
その日は眠れなかった。
勢いで上京し、渡辺に会い、そして押しかけるように彩に会いに行った。
そして、何の駆け引きもなしに彩へ告白した。これで本当によかったのだろうか?
もっとじっくり話をしてからでも遅くはなかったのではないか?
そんなことが頭を駆け巡った。
考えれば考えるほど不安は大きくなり、終いには彩と島村は付き合っているのではないかなど考えだした。
そんなことを考えて、ウジウジしている自分が嫌だった。
彩に会え、思いを伝えることができ、今回の上京の目的は果たせたじゃないか。
それでダメだったらキッパリ諦めようじゃないか。
久しぶりに彩に会えてうれしかっただろう。
それに明日(実質的には今日)も、また会えるじゃないか。それだけでも十分だよな。
そう考えると不思議に気持ちが落ち着いた。
俺は深い眠りについた。
翌朝、電話が鳴っていた。
まだ、寝ぼけた状態で着信も見らずに電話を取った。
「おはよう!まだ寝てたよね?」
この声は誰だ!俺は自分が新宿のビジネスホテルにいることすら分かっていない。
「おはよう」とりあえず答えておく。
「○○の部屋っていくつ?」
彩だ!ようやく気付いた。時間を見ると7時30分だった。
俺「512だよ。今どこにいるの?」
彩「ホテルの下。今からそっちに行っていい?」
そう言うと彩は電話を切った。
慌てて身支度をする俺。着替え終わるのと同時に部屋のドアをノックする音が聞こえた。
開けると彩が立っていた。
彩「来ちゃった」
俺「はえーな。何時に起きて家でてきたんだよ?」
彩「6時前に起きたよ。昨夜はほとんど眠れなかったから」
彩をじっと見つめる。彩の目がウルウルしていた。
ただ愛おしいと思って抱きしめた。彩も俺の背中に手を伸ばし、抱きしめ返してきた。
俺たちは一時無言で抱きしめ合った。
新宿のビジネスホテルの一室。抱きしめ合う二人。
彩の胸が俺の胸に触れていた。相変わらずの弾力だった。
彩を抱きたい!自分の胸の鼓動が聞こえるくらいドキドキしていた。
俺はそのまま彩を抱きたい気持ちを抑えて、彩から離れた。
俺「コーヒーでも飲む?」
彩「うん」
俺はホテルのサービスの備え付けのコーヒー(モンカフェみたいなもの)のパックを開けて、カップにポットのお湯を注いだ。
コーヒーを入れながら、いつになく緊張している自分を感じた。
その時、俺の背中に彩が触れた。背中越しに彩が顔を寄せてくるのを感じて、さらに鼓動が速くなる。
振り返ると彩が俺の顔を見つめていた。俺はそっと彩に唇を重ねた。彩もそれに応えてくれる。
俺は恐る恐る服の上から彩の胸に触れた。1年半ぶりの彩のおっぱい。やわらかい。
俺「いいの?」
静かにうなずく彩。
俺は彩のブラウスのボタンをゆっくりと上から外し始めた。フルカップの薄いブルーのブラが深い谷間を形成していた。以前よりも大きくなった気がした。
ブラの上から頂上付近を触る。彩から微かに吐息が漏れる。
それから、ブラウスを脱がせて、ブラのホックをはずした。プルンと弾けるように彩のおっぱいが顔を出す。
窓から朝日が射しこみ、彩の裸体を照らす。相変わらず張りのあるきれいなおっぱいだった。
彩「明るいよ。恥ずかしい・・・・・」
俺はそのおっぱいの薄いピンクの先端に唇を寄せた。
「あっ」
彩が声を漏らす。
さらにスカートを脱がすとブラとお揃いのブルーのパンティが現れた。遠慮がちにパンティの上から彩の秘部をさすってみる。微かに彩が反応する。
手を中に侵入させるとしっとりと濡れていた。ゆっくりと上下に動かしながらかき回すといやらしい音を立て始める。
もう俺の愚息もギンギンだった。俺は彩の片手を自分の愚息にもっていく。彩はそれに応えるように自ら俺のトランクスを下ろすと躊躇なく咥えだした。前よりもフェラがうまくなったような気がした。
俺は途中でフェラをやめさせると彩の中にゆっくりと挿入した。
「ああっ」思わず彩が声を上げる。
そこからは憶えていないくらい彩に没頭した。
このときは、不思議に小林や島村や渡辺など他の男のことは全く考えなかった。
俺は彩を逝かせると自分も彩のお腹の上に精を放った。
二人とも汗びっしょりだった。
彩が俺の胸に顔を寄せてきた。
俺は彩を強く抱きしめた。本当に愛しいと思った。
もう絶対、この娘を離さないと心に誓った。
彩は羽田空港まで見送りに来てくれた。そして次の連休に九州へ来ると言ってくれた。
別れる間際に俺は彩に確かめるように聞いた。
「昨夜の返事はOKってことだよね」
彩は静かに頷いてくれた。
九州に戻って1週間後の土曜日。
俺は夕べ飲みすぎて昼近くまで寝ていた。
起きてから、コーヒーを飲みながら、何気なく携帯電話を見ていると着信があった。よほど眠りが深かったのか、全く気がつかなかったようだ。
見てみると驚いたことに智美からだった。すぐに電話をしようかと思ったが、ちょっと躊躇した。
智美とまともに話をするのは3~4か月ぶりだったから。正直、少しだけドキドキしている自分がいたことは否めなかったが、彩とやり直そうと決意した自分を大事にしたいと思い、智美へ電話はかけなかった。
夕方、再び携帯電話が鳴った。どきっとする俺。智美からだった。
俺は1つ深呼吸をしてから電話に出た。
俺(少し澄ました声で)「はい、○○です」
智美「あの、智美です」
俺「ああ。久し振り、元気か?」
智美「うん。突然電話してごめんね。今日ってこれから忙しい?」
俺「別に用事はないけど・・・・・」
智美「少しだけ会えないかな?」
俺「どうしたの?何かあった?」
智美「・・・・・会って話したいの。××のデニーズまで来てくれない?」
複雑な思いで胸が苦しくなった。
俺「・・・・・わかった」
智美「今からでも大丈夫?」
俺「ああ、5時には行けると思う」
智美「待ってるから」
電話を切ると心が重くなった。智美は何で俺に会おうとしているのだろうか?
まさか、平山と別れて俺とやり直したいとでもいうのだろうか?
俺は彩とやり直す決心をしたばかりだ。
智美になんて言われようとその決意は変わらないはずだ!
そう自分に言い聞かせた。
5時前にデニーズに着くと既に智美が席について待っていた。
俺「久し振りだね」
智美「急に呼び出してごめんね。何にする?」
俺「アイスコーヒーで」
智美が定員を呼び止めアイスコーヒーを追加注文する。
それから、本題には入らず、会社の近況とか昨日の飲み会の話とかをした。
こうして二人で話していると付き合っている時と変わらない気がした。居心地は悪くなかった。
智美は人の話を聞くときは必ず大きな目でじっと見つめてくる。俺は話しながら、智美の大きな目に引き込まれそうになるのを感じた。俺はそんな自分の気持ちを断ち切るように話を切り出した。
俺「お前、平山とはうまくいってるのかよ。付き合ってるんだろ」
智美「・・・・・うん」
分かってはいたものの、智美から平山との関係について初めて肯定的な返事を聞かされるとショックだった。
目の前に座っている智美を見る。今日の服装は大きめのパーカーを羽織っているため、分かりにくいが、その下には豊満な胸が隠されている。平山がそれを好きに弄んでいると思うと胸が苦しくなった。
俺「今日はどうした?」
智美「○○君は、私のこと本気だった?」
唐突な質問に戸惑う俺。
俺「ああ。本気で好きだったよ」
智美「ほんとに?私たちどうしてうまくいかなかったのかなぁ」
俺「俺が智美のことを好きすぎて、思うようにならない智美にいらついていたんだと思う」
智美「私はいつも○○に愛されているのか不安でいっぱいだった」
俺「ごめんな」
智美「ううん。誤ってほしくて会ってもらった訳じゃないから」
俺「・・・・・」
智美「一歩踏み出す前に○○に愛されていたってことを自分の思い出としてしまっておきたかったから。私、平山君と結婚しようと思ってる」
「私、平山君と結婚しようと思ってる」
正直、これを聞いたときショックだった。
俺「そうか。おめでとうだね」
智美「ありがとう。私、○○と会えてよかったと思ってるよ」
俺「うん」
智美と別れた後も何かを引きずっている自分がいた。なんか胸の中にぽっかりと穴が開いたようなそんな気持ちだった。
それから2週間後、智美と平山が結婚するとのニュースが支店の話題をさらった。二人が正式に上司に報告したようだ。
石川はショックだったらしく、二人で飲んだとき、かなり荒れていた。石川は智美のことを未だ諦めてなかったらしい。俺は、ただ黙って石川の愚痴を聞いていた。
程なくして、約束どおり彩がやってきた。ちょうどその時は仕事の担当が増え、忙しくてちょっと心が荒んでいた時期だった。空港に降り立った彩の笑顔を見たとき、ほっと安らぐ自分がいた。
連休の3日間はどこにも行かず、彩と二人きりの時間を過ごした。音楽を聞いてまったりしたり、TVゲームをしたり、手をつないでスーパーに夕飯の買い出しにいったり。仕事のことも智美のことも忘れた。
こんな落ち着いた生活もいいのかなと思った。あっという間の3日間だった。
空港の搭乗口に向かう彩の姿を見送っていた時、突然引き留めたい気持ちが湧いてきた。本当に帰したくないと思った。彩はガラスの向こうから、聞こえない声で「ま・た・ね」と言って東京に帰って行った。
彩がいない部屋に一人で戻ると何故か違和感を感じた。ずっと一人で生活してきた部屋なのに、たった3日間一人ではなかっただけでこんなに変わってしまうものなのか。
今までに感じたことのない気持ちだった。この部屋には、自分には彩が必要なんだと本当に思った。
それから、彩が再び訪れる日をひたすら待った。彩に会える日を目標にして、仕事にも打ち込んだ。
彩が次にやってくるまでの3ヵ月の間に2人の女性から告白を受けた。人生って不思議なものでモテル時期とモテない時期があると思う。モテたいとあがいているとと全く駄目で、そう思ってない時に限ってその周期が突然やってきたりするものではないだろうか。
それまでの自分だったらフラフラしただろうが、そんな誘惑にも全く動じることなく彩が来るのをひたすら待った。
そして彩がやってきた。
俺は決心していた。その言葉を早く彩に伝えたかった。
彩を空港に迎えに行った。彩は変わらない笑顔で到着口から出てきた。
俺も笑顔で彩を迎えた。
彩「おなかすいた!なんか食べに行こう!」
俺「なにが食べたい?」
彩「××のラーメン!」
本当はちょっとおしゃれなレストランとかを想像していたが、まあ、いいかと思った。
ラーメン屋のテーブル。彩と俺が向かい合ってラーメンを啜っている。
俺「彩、ちょっといいか」
彩「なあに」
俺「結婚するよ」(ほんとならば『しようよ』だが)
彩「・・・・・えっ」一瞬彩には何のことだかわからなかったらしい。
俺「結婚するよ」
彩「・・・・・私と?」
俺「あたりまえじゃん!」
彩「・・・・・ほんとに?」
俺「ほんとに!」
彩「・・・・・」
俺「だめなの?」急に不安になる。
彩「だめな訳ないでしょ。でもラーメン食べながら言うか!」
俺「ごめん。でも早く彩に伝えたくて」
彩「・・・・・ありがとう。うれしい」
二人で笑った。彩は少し泣いているようでもあったが。
半年後、俺たちは無事に結婚式の日を迎えた。

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