俺のほうは父方の祖母の痴呆が進み、その介護で若くない俺の両親は自宅と祖母の家の決して近くない距離を行ったり来たりで疲れており、俺は仕事がなかなか抜けられず手伝いといえることがほとんどなにも出来ないでいた。ほぼ寝たきりとなっていて、あまり長くないということも分かっていたので顔だけでも見て置こうと時間の都合がつけばなるだけ祖母の家に帰るようにしていた。で、その間ほぼ毎日お互い掛けていた電話での毎日の報告を怠るようになってしまった。
一方彼女の大学は、専攻している学科が派閥争いの激しいところで、互いの派閥の教授連の言い分などが全く相反していて、授業内容やレッスンの評価が、どれだけ教授連にごまをするかで別れるような状況になっていた。彼女は二月当時はまだ一年生だが、年齢で言えば他の生徒の誰よりも年上で、そのせいか良い意味でも悪い意味でも、両派閥の教授連に目を付けられ、難儀な思いをしていた。彼女はリーダーシップを取れる個性をもっており、グループで行う授業などでも率先してまとめていたのだが、それに甘えて年下のクラスメートは彼女にまかせっきりという状況になってしまい、また女性同士の嫉妬心からもありもしない噂を立てられたりでストレスで参ってしまい、以前より強い薬を飲むようになっていた。
で、お互いたまに連絡を取り合っても、そのたびにぎすぎすしていて、厭味をいいあいもうだめなんじゃないだろうか、ってふと考えたのが一月半ばくらいだったと思う。そういう中、彼女の方はある教授からセクハラめいた言動をうけたり、俺はおれであまり顔を合わせることのなかった親戚との関係で疲れていた。
二月になって、祖母が亡くなった。慌てて仕事を休み田舎に帰り祖母を送った。葬儀の日それまで止めていた煙草を久し振りに吸った。ちょっとくらっとしたけど一つ大きな仕事が終わった気がして少しだけ気分が良くなり、深夜に彼女に電話した。
その時彼女も、いままでずっと懸念事項だった家族の問題に、ひとつだけ解決がつきそれらのことをお互い電話で話して、久し振りにお互い穏やかな気分になれて、二人で携帯電話を耳に当てたまま号泣してしまった。お互いの気持ちって、どんなに離れててもちゃんと伝わる!ってその時思った。遠距離なんて大したことじゃない。まめに連絡とってれば大丈夫。って思った。お互い思いやる気持ちには距離関係無い。
で、電話をしたら急に会いたくなった。祖母の地方はちょっと葬儀のやり方が変わっていて翌日は一般でいう初七日にあたることをやり、近隣の人達におもてなしをする。で、なんとか夕方近くになって終わり、時間をみるとなんとか最終便で彼女のところへ行けそうだった。翌日も実はいる予定だったのだが、昨夜の電話の余韻が深くこころのなかに染みていて少し罪悪感を感じつつも急な仕事が入ったと両親にウソをついて駅に向かった。
葬儀を終えたことと、彼女に会える事でなんだかむちゃくちゃ躁状態に嵌ってしまった俺は彼女の元へ向かう新幹線の中でしこたまビールを飲んで酔っ払ってしまった。見知らぬ隣の中年女性にまで話し掛ける始末だった。
ネクタイははずしていたのだが、線香臭さからか
「ご不幸ごとでしたか?」
とその女性に聞かれたのだが
「はい。これから彼女のところへ向かいます」
と間抜けな返事をした事を憶えているな…。
今から君のところへ行くっていう連絡をしてからは、
「時間は大丈夫?」とか
「仕事は大丈夫?」とか
「何時につくの?」とかメールが立て続けに届き海をふたつばかし越えたこともあり、ちょっとした主人公気分で浮かれていたな…。
で、6時間ほどで彼女の住む町へ着いた。タクシーを拾って急ぐ。
彼女のアパートの玄関のチャイムを押す。すぐに足音がして、確認する様にチェーンが掛かったドアが少しだけ開いた。で、彼女の顔を見てなんか「あぁやっと着いた」ってのと、変だけど何故か「帰って来たぁ」って思ってしまった。ちょっと泣きそうになってしまったんだけど、泣かなかった。
彼女は寝巻きで片手には本を持っていた。待つ間読んでいたんだろう。部屋に入るなり本を床に落として抱き付いてきた。顔をくしゃくしゃにして。
感情の起伏が激しい子で、嬉しい時と悲しい時のこころが顔に思いきり出てしまう。そのせいで損することもあるが、そういう正直なところも好きだ。その後しばらくは彼女は泣いたままで。二人の間でいうところの「オーバードライヴ技 泣きわめき」がひとしきり…。
「なきわめき」が終わると、コートと上着を脱いで、とりあえず床に座る。で、テーブルを挟んで
「疲れたでしょ?」
「いいやそんなんでもないよ」
「なんかお茶でものむ」
「うん」
「なに読んでたん?」
とかどうでもいい話をした気がする。
あの時はなにか他に別に言いたいこと、話したい事が絶対あったと思う。
例えばああいう時こそ「愛してる」て言えば良かったのかもしれん。続けてしばらくの間、学校、葬儀の話をした後、自然とすぐそばにあるベッドの方へ二人で抱き合ったまま倒れ込んでいった。アルコールがまだ身体の芯に残っていて、役に立たないかもと思いつつそそくさと俺は裸になり、彼女のパジャマ代わりのスエットの上下を脱がしに掛かった。
心配していたのだが、充分役には立てそうだと確認した後、彼女のまだパンツを穿いたままの股間に手をやると、めちゃくちゃ濡れていた。彼女は体調にも寄るけど、おおむね濡れにくくローションは必需品なのだが、このときは付き合って初めてかと思うくらいびしょびしょになっていて、俺は一瞬生理かと思い自分の手を確かめたがそうじゃなかった。この普段とは違う濡れ方に、俺はものすごく興奮してしまい急いで彼女の下着を引き降ろしてあらためてまた確認した。なんというか、ほんとびしょびしょですでにベッドのシーツにまでうっすらとシミが見えた。
とりあえず前戯は置いといて、とにかく入れたいと思ったんだが、その時コンドームを用意してない事に気付く。彼女は避妊に関しては厳しく、彼女が発情期の時にすごく高ぶっている時くらいしか生でやることはなかった。そういう人だから彼女自身も用心のため自分でコンドームを部屋に置いている。置き場所はいつもの衣装ケースの一番上の棚。このコンドームは大体俺が、彼女のところに遊びに来た時に買って、で使い残した奴とかを置いてるのだがその夜、いつもの場所に置いてあったのはベネトンだかのコンビ二で売っているやつだった。箱の蓋はすでに開けられていて、俺が取り出したときには二つばかり無くなっていた気がする。
このコンドーム見たときになんかかすかに、アルコールでふらふらしている頭の隅がなんかチリチリした様に思う。その夜のコンドームの箱が気になったというのは、今浮気が知ってしまっているから改めて考えるとって事なんかもしれん。その時にはやはりあまり気にせずに使ったんだろうな…。文章にしてみてなんか冷静になったのかどうか、酔った頭では良く分からないな・この数ヶ月はずっとそうだけども寝る前になるとちょっと息苦しくなる。
また禁煙しようかとも、思うんだがつい吸ってしまう。彼女に換気扇のとこ以外では吸わない様に言いつけられてるんだが、気がつくと今モニターの前で吸ってしまっていた。
で、その夜の続き。
コンドーム着けて、挿入した。腰を動かしながら彼女の顔を見るとまだ涙のあとがほっぺたに残っている。そのときもまた目じりの方からじわっと水滴が滲み出てきていた。気持ちよいというより安心感のような感情が、低いあえぎ声になって彼女の口を開いている。
新幹線の中では酔いつつも結構俺は高ぶっていて、今晩やったら見事に早いだろうなと思ってたんだが、その夜は全く逝けなかった。長い事突いてたのに、彼女のあそこはずっと濡れたままで途中これはおしっこじゃないんだろうか?と疑い匂いを嗅いでみたほどだった。
彼女の口からは「うん・・」という抑えたあえぎ声のほかに「好き」とか「良かった」とか「ありがとう」って言葉が漏れてくる。「愛してる?」って問いは出てこなかった。
そのまま逝けずに感覚が鈍ってきて惰性のまま突いていると、いつの間にか彼女は寝息を立て始めた。抜いてコンドームを外す。完全に寝てしまった彼女のあそこは、しかしまだびしょびしょだった。
結局お互い素っ裸のままで掛け布団をかぶってその日は寝た。
女が浮気した時の言い訳ってみんな同じだな。
さみしかった、とか、構ってくれんかった、とか。発覚して、問いただした時の返答も似てる。
「誘われたけど拒否した」
「ホテルに誘われたけど付いていかなかった」
で、
「ホテルには行ったけど、結局なにもしなかった」
やったことが確定しても
「したけど全然気持ち良くなかった」
「一回しかしなかった」
てなるもんな。責めたててしつこく尋ねると
「・・・したときはちょっとだけ興奮したかも」
・・・・ウガーーーーーーーー文法の5段活用みたいだな…。とは云っても、全部ありのままに話されたら、ホント頭がおかしくなるかもしれん。俺が彼女のメール盗み見て、問い詰めなかった方がどっちも幸せで、今も心おだやかに眠れたのかもしれない。彼女に別けてもらった弱い眠ザイもあるんだけど、明日おきれなさそうで恐い。
宦官は性的な悩みは一切なかったのかな?
彼女が今の時点で白状してないことを想像して興奮しているチンコ見てるとなんかのひどい冗談のように思える。自分とセックスしてるときの、彼女のあのあえぎ声や汗で光る背中とお尻、正常位でしてるときに「おっぱいももんで」って切ない声。俺が手を取って彼女のクリトリスに自分で触らせると堪らなくなり、自分で刺激を加える時のあの手の動き。バックで突いているときに、おしりに指を入れたのときの身体の緊張とそのすぐ後に吐き出される、「はぁーーー」って声。あの狂態は自分の前だけでの姿だと思ってたのに、もしかすると他の男の前でも見せているかもしれないと思うと、たまらんくなるな…。
最初白状した浮気相手は一人。
日時と以前聞いた話と総合して矛盾点を突くと浮気相手は二人…。浮気のこと聞き出す時は、さも「話しても怒らないよ」って感じで聞いて話渋る時は適度に体を刺激しつつ、話を促す。
「正常位でしかしてない」
「下だけ降ろしてした」
信じれんよ。正常位で突いて、ローターでクリトリスを刺激しながら聞いたら
「胸ははだけて見せた」
「おっぱいにむしゃぶりつかれて、激しくもまれた」
「A子はエロいんだろ?」
普段あまり付き合いないってはずなのにA子って呼び捨てかよ。
「ラブホ行ったのは一回だけ」ってなんで、メールには「A子お気に入りの****行かない?」って一回だけでなんで「お気に入り」なん?? 死ぬほど沢山、疑問点はあり尋ねるとそれなりに筋の通った答えは出してくる。もしかするとその答えは真実なのかも知れないけど、信じることができない。
お互いに愛があればセックスは最高の行為になるけど、愛がなくても、ただただ肉だけがぶつかり合うようなセックスもある意味最高なんだろうな、と思う。なんでこんなむごいんだろう。
浮気をした事が分かったとき、怒りで目の前が暗くなるって感じが初めて分かった様な気がした。その後、話を徐々に聞くにつれ怒りと共に、興奮も高くなってくる
「身体のわりにはあそこは大きかったかも…。」
「へぇ・・・どのくらいだったん?」
って何気なさを装って聞くとその言葉に嫉妬を感じ取ったのか、言葉を濁す
「うーん、よく憶えてない…」
冗談めかして
「今度浮気する時は定規用意してやってよ」
というと黙り込む。なんかセクハラしてるみたいだ…。
で、その翌朝またいつもの様に朝起ちの勢いに任せてやった、と思うんだが実は良く憶えていない。と云う事は、やったにせよ記憶に残らない程度のおざなりなセックスだったんだと思う。
俺が彼女のアパートに着いたのは金曜日で、タイミング良く彼女は土曜日の午前中にバイオリンのレッスンがあるだけで以後日曜日までおやすみ。俺は月曜日は夜勤だったんで当日の昼に帰れば良く、二人で過ごす充分な時間が久し振りに取れた事でお互い喜んでいた。
その夜は彼女とその親友Nちゃん(処女)&Hちゃん(処女)の四人で食事をした。彼女がトイレに立ったときに早速ここ最近の彼女の様子を聞いたが
「睡眠も充分に取れないで、かなりヤバかった」
とのこと。あと
「この前は3人で練習室で抱き合って泣いてしまった」とも。
この言葉はその時は何のことか分からなかった。
すぐに彼女がトイレから出てきた姿が見えたため
「君らのおかげでA子も頑張れる。これからも良い友達でいて下さいね」
とお礼を云って、話を打ち切った。
彼女が戻ってからすぐに
「3人で泣いたって、なんのこと?」
って聞いたんだが
「色々しんどくて・・・」
って答えしか得られなかった。二人もあいまいに笑うだけ。
当夜の会話であと記憶に残ったのは、彼女の通う学校の女子大生は処女か、男遊びが激しいかの両極端、という話や、飲んだ後に行ったカラオケボックスで選曲番号をリモコンに入力する時、
「@@@@入れて」て云うところを、
「@@@@ハメて」と普通に言う、
地元出身のNちゃんの無邪気な声にちょっとショックを受けたりした。最後は四人でゲーセンに行き、プリクラ撮った。彼女と二人だけで撮ったやつは
「2月X日○○ちゃん(俺)が会いに来てくれた。ありがとう大好き。」
と彼女の書いた言葉が添えられた。

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