あれから何度か先輩たちと会って、話して、コスはコハルに決まった。
「あやち、キャラが決まったし準備進めるから採寸させて。」
「はい、わかりました。どこでしますか?」
「鍵も借りたし、近くて楽なてっつん家だな。」
「はい、でも本当に猫飼先輩がいない時に家にあがって良いんですか?」
「大丈夫だよ、心配ならLINE送っとけば?」
「あ、そうですね。そうします。」
『コスの採寸するので、ユーコ先輩と先輩のお家に行きます。お部屋借りますね。』
「LINE送りました。」
「それじゃ、行くか。」
「昨日、決めたばっかりで直ぐ準備はじめるんですね。」
「コスが早目にできてた方が安心してコミケを待てるだろ?」
「1人でやってたらドタバタして、何とか見られるかなぁ?くらいで終わりそうです。」
「今年は思いっきり楽しみなよ。」
「はい、ありがとうございます!」
「あれ?猫さんたちいませんね…」
玄関からリビングまで猫さんたちを見なかった。
「てっつんがいないからな、どっかで寝てるんだろ?」
「そうですね……」
ちょっと残念。
「じゃあ早速、あやち脱いで。全裸、すっぽんぽん。」
「え………?そこまで脱ぐ必要ありますか?」
「うん、あたしのテンションがあがる。」
「………必要ないと思いますけど?」
「しょーがないか、じゃあパンイチで。」
「………。」
「わかった、わかったよ。下着になればいいから。ちぇー、自然な流れであやちの全裸、少なくてもおっぱいくらいは見れると思ったのにな〜。」
なんでそんなに残念そうなの?
「自然な感じはしませんでしたけど?」
「そうか、あたしも精進が足りんな。」
「あはは、そんな精進はいりませんよ?」
それから下着姿でユーコ先輩に採寸してもらっていた。
どのくらい経っただろう、チャっと背中の方で音がしたと思ったら足元を黒い影が通り過ぎていった。
「おつかれー、まだ終わってないのか?」
「おっかえりー、もうちょっとだな。」
「へっ………?」
振り返って猫飼先輩の姿を見たわたしはフリーズした。
「おっとぉ、これはスマン。上にいるから終わったら声かけてくれ。」
「っっ!にゃぁ〜〜っ!!」
バッとしゃがみ込んで、両腕で胸を覆い隠したわたしの両脇を黒い影が凄い速さで駆け抜けていった。
「あやち、これは事故だ、半分くらい?」
「じこ?はんぶん?」
「うん、半分くらいの事故だな。残りは態とだ。」
「わざと…?なんでそんな?」
頭が回らない。
「早く帰ってくればスポンサーのてっつんに少〜しくらい、なんか良いもの見せてやろうかなってさ。」
「ぅぅ〜……でも、わたしの下着姿なんてそんなに良いものじゃないと思いますけど?」
「割と良いモノだと思うけど?」
「………」
そんな事もあるけど先輩たちと過ごす時間が凄く楽しくて青柳先輩の彼女(仮)よりも先輩たちと過ごす時間とオタク成分が勝ってしまい、1ヶ月近く1回も会わななかった。LINEはしてたけど、予定が合わなくてデートしようってならなかったし、これから上期試験になるし、コミケが終わった後かなあ………
『あやち、ごめーん』
『遅れるから、てっつんと先に行ってて』
ユーコ先輩は遅れるのか…っていうことは猫飼先輩と2人だけ?
『わかりました〜』
まだ、2人だけになるとまだちょっと緊張するんだよね…そんなことを思いながらサークル部屋のドアを開けると猫飼先輩が待っていた。
「こんにちは、猫飼先輩お待たせしました。」
「おつ、あやち。大丈夫だ、まだ、ヨーコが来てない。」
「あ、ユーコ先輩は遅れるそうです。先に2人で行って欲しいってLINE来てます。青柳先輩、こんにちは。」
大丈夫、まだそんなに緊張してない。噛まずに話せたから大丈夫、視界の端の方に見えた青柳先輩にも普通に挨拶できたし。
「そか、俺にはなんも来てないわ。ま、良いか…やぎ、またな。あやち行こうか。」
「はい、行きましょう。青柳先輩、さようなら。今日も猫飼先輩のお部屋ですか?」
青柳先輩は他の人がいると、本当にただのサークルメンバーって態度になるから、わたしもなるべく同じような感覚で【さよなら】を言った。
サークル棟を出ると猫飼先輩はわたしに合わせて、ゆっくり歩いてくれていることがはっきり分かる。
「手、つなぐ?」
「えっ…?」
わたしに差し出された手と先輩の顔を交互に見てしまう。
「あっはははは、冗談だよ。」
「え………?」
「いや〜、手を繋いだらデートみたいになるかなって思っただけさ。まあ、それは近藤ちゃんの彼氏に悪いか…」
「あっ、えっと……別に彼氏とかは……」
あれ?……猫飼先輩の彼女ってユーコ先輩だよね?
「ん、どーした?」
「いえ、何でもないです。」
「何か食い物と飲み物買って行かなきゃな。」
「はい…」
あ〜、びっくりした、心臓がバクバクしてるよ。
ちょっとだけ遠回りしてスーパーで買い物をして先輩家に着くと玄関でユーコ先輩が腕組みをして不機嫌そうに立っていた。
「ヨーコの方が早かったか。」
「そうだな、あたしの方が早かったな…そっちは買い物デートか?」
「あっ、あの、ちが……」
「そうだよー、近藤ちゃんと晩ごはんどうしよー?って楽しくお買い物だ。」
わたしの言葉を遮って猫飼先輩はそんなことを言ってしまう。
「あっ、あのっ、違いますから!デートじゃないです!ただの買い物です。」
必死に否定するけど耳が熱い。
「近藤ちゃん、そんな必死に否定しないでくれるか?流石にちょっと傷つく。」
「あっはははは……大丈夫、デートじゃないって分かってるから。いちいち、コイツの軽口に付き合わなくて良いからな?」
「あ、はい………あの、わかりました。」
うぅ〜っ、顔が熱いよ………
「さって…そんでさ、衣装が形になってきたからさ、あやちに1回合わせて欲しいんだよね。その後、調整して完成ってとこだな。」
「流石ヨーコ、仕事が早い。」
カバンからコハルの制服が出されていく。
「で、てっつんよ、銃と羽とか小物はどうした?」
「銃本体は買って小遣いと一緒に氷見に渡してある。そんで細かいディテールやら付属物、羽なんかもまとめて頼んである。」
「大丈夫か?ワンフェスあるだろ?」
「夏は出品しないって確認済みだ。」
並べられた制服はわたしの想像を遥かに上回っている。
「まあ、それなら大丈夫…だ……なあ?」
「氷見先輩?って会ったことないと思いますけど?それに何か問題があるんですか?」
「あいつはたま〜〜にしか来ないから、会ったことないかもな。」
「何かに集中すると、頼まれ事を忘れる…ことがある。」
「今回は大丈夫だろ、欲しがってるガレキ買える分やったから。」
「え…と………」
「どうした?近藤ちゃん?」
「また、お金出したんですか?」
「気にしなくて良いよ。」
「いやいや、ダメですよ。」
「ヤツとは持ちつ持たれつ、頼み事しあってるからな。小遣い渡したけど、ヤツからの頼み事で俺に戻って来るし。行ったり来たりしてるだけさ。」
「あやち、本当に気にしなくて良いぞ。」
「えと、でも………」
「どうせ交換条件だろ?」
「冬のワンフェス用にイラスト頼まれてる。」
「ほらな?だから、気にしなくて良いんだよ。」
「はあ、わかりました…」
「さあ、あやち、先ずは脱ごうか?」
「そうですね……?って、猫飼先輩の前じゃ脱ぎませんよ。」
「もう、いいじゃぁ〜ん。何回も見せただろ?」
「見せたんじゃないです、事故です!見られたんですぅ!」
わたしは笑いながらボタンを外しはじめた。
上期試験が終わると直ぐにユーコ先輩から『コス合わせるよー!』ってLINEがきた。
『あたしは4時くらいに行くんで、よろしく』
『わかりましたー!猫飼先輩のお家に行けば良いですか?』
『あやち、待ってるよ』
待ってるよっていう猫飼先輩の言葉に浮かれてしまったのか2時過ぎに先輩の家の前に立ってしまっている。早すぎるよね、どーしよー………約束の時間まで後2時間くらいある。
「あやち、悪いね。ちょっと出てた。」
「へぁっ?」
突然背後から猫飼先輩の声がして変な声が出た。
「どした?びっくりさせたか?」
「あ、はい……今、着いたばっかりで、どーしよーかなって思って、2時間も前だったから。」
「ははっ、そうか。今度からはそんなこと気にしなくて良いからな。」
「はい、ありがとうございます。」
「ほれ、あがりな。」
扉を開けると玄関でちょこんとお行儀よく座っていた2匹の黒猫さんは尻尾を立てて猫飼先輩の足にすり寄っていく。
「あ〜、ごま様、団子ちゃん…こんにちは〜。」
ごま様はちらっとだけわたしを見てくれたけど、団子ちゃんには完全に無視された。まだ、全然慣れてくれないな。
「先輩、今年のコミケには何を出すんですか?」
「ブルアカの薄い本とイラストだな。」
「誰の本ですか?両方とも18禁ですか?」
わたしたちはリビングでおやつを食べながらユーコ先輩を待っていた。
「イラストは全年齢だな、Xにポストしたヤツも含めて出す予定だ。」
「誰の薄い本ですか?」
「それは内緒だ。」
「う〜ん、気になります……誰だろう?」
「ネタバレはしないよ。」
楽しみに待ってようっと…
「あ、そうだ。」
「どうした?」
「販売のお手伝いさせてください。」
「ん?売り子してくれるのか?」
「はい、やってみたかったんです。」
「助かるよ、あやちで5人集まったから大丈夫っぽいな。」
「5人もいるんですか?」
「ヤスと合同だからな。俺、ヤス、ユーコ、三輪とあやちで5人。」
「三輪先輩とは、あまり話したことないですね…」
「あいつは基本、彼女優先だからサークルも来たり、来なかったりだしな。でも、コミケだけは例外らしい。」
「そうなんですね。」
良いなぁ、三輪先輩の彼女さんが羨ましいな…
「ごめ〜ん、待ったー?」
「うう〜ん、いま来たとこー…ってそんな訳あるか。」
17時頃にやっとユーコ先輩が来た。
「あやちゴメンね、遅くなって。」
「全然、大丈夫です。」
「予定より1時間近く遅いじゃねーか。」
「悪い悪い、ちゃんとお詫びにお土産買ってきたからさ、後で食べよーぜ。これ冷蔵庫に仕舞っといて。」
「ほいよ。」
ユーコ先輩と猫飼先輩って本当に仲良いよなぁ…。
「ほぼ出来たから微調整と羽なんかと合わせたりだな。」
「さっき氷見から羽を受け取ってきた。」
「ほー、氷見にしては早いじゃん。予定よりかなり早く完成しそうだな。」
ユーコ先輩がカバンから衣装を取り出していく。
「早速、始めるか。」
「はい、始めましょう。」
「よし、んじゃ、あやちは脱ごうか。」
立ち上がってわたしはシャツとスカートを脱ぐ。
「かあー!タンクトップとショーパンとか!つまんねーモノ着てるなー。」
ユーコ先輩は片手で目を覆って天井を仰ぎ見る。
「本当にヨーコは、あやちが絡むと完全にオヤヂになるな。」
「だって期待してたんだよ。」
「えーっと………」
「あやち、こいつのことは気にしなくて良いよ。」
「あ、はい…早速、着ますね。」
「あやち…」
「はい?」
コハルの制服を手に取ったわたしはユーコ先輩に手首を掴まれ止められる。
「せめて、ショーパンは脱ごうよ…」
目つきが本気だ………
「スカート履いたら脱ぎますね。」
「じゃあ、せめて…タンクトップ脱いでからセーラー着ようぜ、な?」
「あやち無視して良いぞ。」
「そんな事言うなよ〜、てっつんだって見たいだろ?」
「お前な、俺も見たいって言ったら強制してるのと同じだろうが。あやち早く着ちゃいな。」
「はぁ…」
ユーコ先輩の視線を感じながらスカートを履いて、セーラーを着る。
「あ〜あ……あやち、ショーパン脱ぐよな?」
ものすご〜く残念そうな視線を浴びせられて、スカートの中の入れてショートパンツに手をかける。
「あやち、嫌だったらショーパンも脱がなくて良いからな。」
猫飼先輩の言葉にユーコ先輩は呪いでもかけそうな目つきになっている。
「あ、いや、脱ぎます。ちゃんと確認しないとダメですから。」
「うんうん、そうだよな。だったら上も脱いで欲しかったな〜。」
「ヨーコ、あやちが困ってるから止めとけ。」
「ちぇー、分かったよぅ。」
ユーコ先輩の恨めしげな視線の中でショートパンツを脱いだ。
「さってと…どうだ?」
わたしは鏡に映ったわたし自身を見て呆然としていた。
「あやちの素材も良いけど、ヨーコもいい仕事したな。」
「うん、これは納得の出来、微調整して完成ってとこだな。あやち、写真撮らせて。」
「はい………」
「ほい、帽子も被って。」
「あ、はい………」
「帽子も良い出来だな。」
「既製品にちょっと手を加えただけだ。えぇ〜っと……これでよし、と。」
「何がですか?」
「サークルのLINEに写真送る準備したんだよ、反応見たいからな。」
「先ず、制服と帽子だけでっと……あやち向き変えて。」
「はい。」
なんか通知音が鳴りっ放しなんだけど…?
「背中の羽の高さはどのくらい?」
「俺が腰のあたりで押さえる、あやち良いかな?」
「はい、お願いします。」
「ヨーコ、LINEで見てる奴らにチェック要請してくれ。」
「おっけー。」
「さっきから通知音が凄いんですけど?」
「皆、あやち可愛いって言ってるよ。」
「そうなんですか?ユーコ先輩の衣装が良いって言われてるんじゃないですか?」
「あやち、自信持てー、セットで褒められてるんだよ。」
「はあ…そうなんですか。」
「やっ君がちょい上って…」
「ちょい上?……こんなもんか?」
「ん………」
背中とか腰で男の人の手が動くのって擽ったい。
「あやち〜、てっつんの手で感じちゃったのか?」
「ちがっ、違いますから、擽ったかったんです。」
「ホントかなぁ〜?」
「本当ですー。」
「あやちは分かりやすいな、あんまり素直に反応するとヨーコのおもちゃになるぞ。」
「はい、気を付けるようにします。」
「まあ、それはそれとして、あっちのヤツラの指摘はあらかた出尽くしたろ…で、てっつんは何かないのか?」
「真横で見てるから、全体が分からんのだ。」
「じゃあ、羽を仮で止めるから離れて見てくれ。」
「おう、頼むわ。」
うわぁ、猫飼先輩にじぃ〜っと見られてる………なんか恥ずかしいな、顔が熱くなってきたよ。
それから猫飼先輩が出す指示に従ってわたしはいろんなポーズを取って、ユーコ先輩は衣装の修正箇所の確認と撮影をしていた。
帰ったわたしは自室のベッドにダイブして大の字になって天井を仰ぎ見る。
「はあ〜、疲れたけど楽しかったな。」
猫飼先輩の家で晩御飯だけじゃなくてデザートまでご馳走になってしまった…なんかお返しした方が良いのかな?
ブルアカのAPを回収して掃討しとかなきゃ…それで……明日は何もないなぁ。
何か忘れてる気もするけど、思い出せないから大したことじゃないよね………

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