2人だけの秘密 (綾視点) 6話

猫飼先輩と布団が敷かれている部屋に来ただけでドキドキが止まらない。そんな時に先輩が少し屈んで、わたしの耳元で囁く。

「ヨーコが向こうで期待してるから、少し付き合ってな。」

先輩の目を見て無言で頷く。


『何やる?』

『ヤスに任せる。』

「あやち、スカート脱がないとシワになるよ?」

「そう…ですね。」

「恥ずかしい?」

「少し…‥‥」

「俺が脱がせて良い?」

「あっ、あの、えと………」

「あはは、冗談だよ。無理しないで。」

『なんだ、脱がせないのかぁ!てっつん、そこはマッパだろぅ!』

ユーコ先輩の声と床をぱんっ!と叩く音が襖の向こうで響く。

「うるせーな。」

『妄想全開させろよぉ!』

「あやち、すっぽんぽんだって、どする?」

「えっと、脱いだ方が良いですか?」

『もちろんだぁ!』

先輩が苦笑いしている。

「あれには羞恥心がないんだな。」

『あれって言うな。』

「あのっ、脱がせてくれますか?」

『イエッス!』

「あっ、あの…」

先輩の手がわたしのシャツの裾をスカートから引き出した。

「脱がすよ、よーく、見せて。」

先輩が裾を擦り合わせると服を脱がされているような音がする。

『あー、三次元の彼女とか!無縁だし!!』

『ヤスもヤギもココでしこるなよ?』

『こんなとこでしねーから!』

「あっ…ちょっ、あの、先輩?」

腰に手を回され抱き寄せられると、先輩の息が耳にかかって擽ったくて、声が凄く近くてドキドキがバクバクに変わっていく。

「もうちょっとエロい内容にして良い?」

バクバクしてる胸を抑えて、コクコクと無言で頷く。

「可愛いおっぱいだね。」

「つついちゃダメです。」

「はい、俺の肩に手をついて。」

「えっと、どーするんですか?」

「パンツも脱がさないとね。」

胸の前の両手を先輩の肩に置いてから顔を見上げると笑いを堪えながら言われた内容で勘違いしたことに気が付いた。

「あっ、あの、あのっ…そんなにじっと見ないてください。」

「綺麗だね~」

なんとか先輩の流れに合わせなきゃ…

「うぅんっ、そんな……すりすりしちゃダメですぅ。」

『何処をすりすりしてるんだよ!羨ましいじゃないか!』

『ユーコ先輩はあっちに行っても良いんじゃ?』

『ダメに決まってんだろ、あたしが行ったら3Pになっちゃうだろ?』

ユーコ先輩、こっちに来ないよね?

「あっ、あっ、んんっ!………抱っこしてください。」

ちょっとだけ牽制しておこうかな…

「良いよ~、おいで。」

「んっ、はぁ。先輩は脱がないんですか?」

「俺も脱いだらエッチしちゃうよ、良いの?」

『隣でおっぱじめるなよな!』

やれやれって顔をしてる。

「おちつかねーなー。あやち、上行こう。ベッドで寝よう。」

「はい…あの、コンドームありますよね?」

「ないよ、生ハメだよ。」

「そっ、外にっ…出してくださいね。」

「さっ、あやち、上行くよ。」

「はい、あのっ、初めてなので優しくしてください。」

『もう、止めて!ヤギのHPは0よ!』

猫飼先輩が襖を開けるとユーコ先輩は胸の前で手を合わせて天井を見上げていた。

「分かった、分かった。ホントにうるせーなー。」

「おやすみなさーい。」 


先輩について2階へ上がっていく途中で猛ダッシュで駆け上がるゴマ様と団子ちゃんに抜かされた。

「うわっ、早い。」

「あはは、足元気を付けてな。階段の上り下りすると彼奴等がダッシュで追い越してくからな。」

「はい。」

わたしが2階に上がると2匹は空のお茶碗の前で座っていて、部屋に入ってきた先輩を見上げて何かを待っているようだった。

「あやち、ちょっと待っててな。」

先輩は瓶から取り出した魚の形をしたクッキーみたいな物を2粒ずつあげている。それを食べ終わった2匹は部屋を出てどこかへ行ってしまった。

「ゴマ様と団子ちゃんはどこに行っちゃったんですか?」

「隣の部屋にお気に入りの場所があるから、そこで寝るんだろうな。」

「一緒に寝ないんですね。」

「気が向いたらこっちに来るよ。」


「えぇ〜っと…」

猫さんたちも居なくなって、わたしは会話のネタに詰まってしまう。

「あやち、これに着替えちゃいな。そのまま寝るとスカートもシャツも皺になるよ。」

先輩が差し出したTシャツを自分の身体に合わせてみると膝上15cmくらいだ。

「大っきいですね。」

「俺が着ても大きめだからな、あやちがスカート履いてなくてもパンツは見えないだろ?」

「そうですね………」

「どした?」

「えぇ〜っと、その…エッチしなくて良いんですか?」

「ん?あやちは付き合い始めたその日にエッチしたいの?」

「えっと、下でそんな話をしてましたから…」

「あ、あー、そうだな、してたな。でもあれはヨーコの妄想に付き合うネタだったろ?」

「…そう、ですね………」

耳が熱くなった。

「まあ、それにゴムがないのは本当だし、溜まってるから生で入れたら中で出しちゃうよ?」

「そ、それは………」

「ダメでしょ?」

「タブン…」

「多分なの?ダメって言わなきゃ。」

「はい、ダメ…です………」

何でわたしが残念な感じになってるんだろう?

「あはは、何だか変な感じになってるな。」

「そうですね。」

「俺はゴマ様と団子ちゃんを見てくるから、その間に着替えちゃいな。」

「はい。」


先輩の背中を見送ってから、スカートのファスナーに手をかけ、着替え終わって脱いだものをハンガーに掛けて、ふぅっと一息付くと先輩が戻ってきた。

「んじゃ、寝るか。俺と一緒のベッドだけど良いよな?」

「はい…」

先輩がスマホを触ると常夜灯になった。

「こっちおいで。」

「あ、はい…」

ベッドに腰掛けた先輩に呼ばれると、着ているのは先輩のTシャツとショーツだけなんだって事が今更、気になってしまう。

「どした?」

「先輩はそのままの格好で寝るんですか?」

「うん。俺が脱いだら、あやちが意識するだろ?」

「あ……はい…」

「おいで、エッチはしないけど抱っこはして良いよな?」

「…」

わたしは無言でコクンと頷いて、先輩の隣に腰を下ろすと肩を抱かれて、そのまま横になる。目の前に先輩の顔が…近い……ちょー近い!近すぎて視線も逸らせないし、心臓がバクバクしてる音も聞かれそうだし、寝られない!こんなの寝られる訳ないよ!

「タオルケットはお腹に掛かってれば良いかな?」

「………はい。」

掛けられたタオルケットは処々解れていたり、毛羽立っているのが分かった時に少し緊張が和らいだ…ような気がする。

「気になるか?」

「え?特に何もありませんけど?」

「そうか、あやちがタオルケット撫で回してるからな……ちょっとボロっちくてごめんな。」

「あっ、いや、先輩が完璧じゃなくてちょつと安心しました。」

口に出したら、もう少し落ち着けた気がする。

「アイツらがこの上で寝たり、ふみふみするからな。あやち用に新しいの出せば良かったかな?」

このタオルケットをふみふみする団子ちゃんや、真ん中でまん丸くなって寝てるゴマ様が目に浮かぶ。

「これが良いです。」

「そうか…」

「はい。」


いつの間にか腰に回されていた手に抱き寄せられて躰が密着する。先輩の体温を全身で感じながら、はじめてのキスをした。そして改めて少し不安になった。

「先輩…」

「ん?」

「本当にわたしが彼女で良いんですよね?」

「俺はあやちが良いけど、むしろ、あやちは俺が彼氏で良いのか?ヤギのことは良いのか?」

「はい、今日も下で青柳先輩に焚き付けてたんですよね?わたしが彼女だって…」

「そうだな、でも俺は半々くらいかな?ヤギとあやちの反応次第ってとこだった。ユーコも半々くらいのつもりだったんじゃないかな。」

「はい………先輩は本気じゃなかったんですよね?」

「ん?」

「本気でわたしを彼女にするつもりはなかったんですよね?」

「本気に聞こえなくてゴメンな。俺もユーコもヤギがあやちに惚れてるのは分かってたし、なけなしの勇気振り絞って告ったんだろうなって思ってた。だから、堂々と付き合ってるって2人に言わせたかった。焚き付けたつもりが失敗したみたいだ、ゴメンな。」

「………」

先輩たちはわたしにも言わせようとしてたの?

「ヤギも、あやちもはっきり宣言しないなら、俺が横から掻っ攫うのもありかな?って思ったんだよ。それに俺があやちを気に入ってるのは本当だからな?あくまでヤギとあやちの関係、態度を優先させようとしてただけだ。」

「はい…」

「今から、ドッキリでしたーってヤギのところに行っても良いんだよ?」

「嫌です…行きません。」

先輩の背中に手を回してぎゅ〜っと抱きつく。

「もうダメなんです…嫌なんです。」

「………」

「さっき目を逸らされたんです。あのとき顔を背けられたんです。」

「うん、そうか。」

「わたしの目を見てくれたら、付き合ってるって言えたかもしれないけど…」

「うん…」

「わたしは先輩の彼女が良いです。」

「わかった、あやちは俺の彼女だ。」

頭をぽんぽんしてくれる。

「でもな、俺もダメなところばっかりだからな?学校とか、ゲームとか、同人とか、投稿とか、アニメとか色々ありすぎて…なるべく時間作って遊びに誘うけど、あやちからも誘ってくれな?」

「はい、誘います。遊びに行きたいって言います。」

「改めて、よろしくな。」

「はい、わたしこそ、よろしくお願いします。」

先輩と2人で話して、改めて彼女って言ってもらえて凄くほっとした。ほっとしたら、急に眠気に襲われて……気が付いたら明るくなっていた。


体を起こすといつもの自分の部屋と違う様子に眠い目を擦り、ぼーっとした頭で考える………

見慣れない天井、けど既視感のある薄い本とまんがだらけの本棚……このタオルケッ……トぉー!わたし先輩の部屋で寝てたんだった!!

慌ててTシャツの裾を抑えて下着が見えないようにする。改めて見回しても先輩はいない。

すっかり明るくなってるし、もう起きてるんだよね…着替えて下りよう。変な寝方してなかったよね?先輩に色々見られてなきゃ良いけど………


「おはようございます。」

「あやち、おはよう。」

「おう、おはよう。」

「先輩、このTシャツは洗濯してお返ししますね。」

「あやち、そのまま洗面所に置いといて、明日あたり洗濯するしな。」

「それはっ!あたしが貰う!」

ユーコ先輩は引っ手繰ったTシャツに顔を埋めて………何してるの?猫飼先輩は呆れ顔で見てる。

「はぁ〜、良い匂い。クンカクンカ…あやちの匂いだ〜。」

「なっ、やめてくださいっ!」

Tシャツを奪い返して抱きかかえる。

「あやち、ごめんよ〜。」

「もう…変態行為は止めてくださいね。」

「これは、あやちが可愛すぎるから止められない。」

思わずため息が漏れた。

「じゃあ、何について謝ったんですか?」

「ヤギにあやちと付き合ってるって言わせようとして失敗した。」

「あぁ…」

ユーコ先輩もこんな事で謝ってくれるんだ。

「そんな事、どうでもいいです。」

「どうでもいいの?」

「はい、猫飼先輩にちゃんと彼女にしてもらいましたから。」

ユーコは目を見開いて、ギ…ギギ…ギといった感じで猫飼先輩を睨見つける。

「おま…ちゃんとって………ゴムはどうした?無いって言ってたよな?」

「俺…」

先輩が何か言いかけたのを遮って否定する。

「してないですっ!エッチしてないですから!」

「え?でも、ちゃんとしてもらったって…?」

「先輩と2人で話して、ちゃんと彼女にしてもらったんです。」

「あ、そーなの?そーか。ふーん、まあ、良かったね。お二人さん、おめでとう。」

ユーコ先輩は拍子抜けした顔でつまらなそうに祝ってくれた。

「そーか、まー、これはこれで良いか、あやち本期待して待ってるよ。あたしも眠いから帰って寝るわ。んじゃ、おやすー。」

「はい…お疲れ様でした、おやすみなさい。」

「またな、おつ〜。」


「さーて、あやちは今日どうする?取り敢えずシャワー浴びるか?」

「えっと…シャワーは、あの、帰ってから浴びます。」

「そうか、じゃあ、今日はどうする?何する?」

「え〜っと、まず、朝分のブルアカを周回して、それから…」

「あははははっ」

先輩がお腹抱えて笑ってる。

「わたし何か変なこと言いました?」

「いや、あははは……俺の彼女としては満点に近い答えかなと思ってさ。」

朝分のブルアカを周回して、朝ご飯を食べた後、わたしたちは買い物に出かけた。もちろん、手を繋いで!

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