『俺も慎さんも納得できる』条件を決めるために、三嶋さん宅に集まった筈だが、話し合いも始まらずに3時間近くが経過し、佑香さんが痺れを切らしはじめる。
「ねぇ、慎ちゃんも西尾さんも、飲んでないで、夫婦交換の条件を決めようよ。」
「まあ、良いけど、佑香の条件…というか希望は?」
三嶋さんには今回の夫婦交換に対して希と佑香さん程の熱量はないようだ。
「どちらかが妊娠するまで続行!」
「ダメ、それは絶対ダメ。」
俺より早く希が拒否したことに、驚きと共に安心する。
「妊娠しなかったら終わり、それで、その後は夫婦交換しないって言ったよ。期間限定での子作り夫婦交換だよ。その条件が守れないなら、しない。」
希が平常の声音で佑香さんの希望を却下する。
「まぁ、分かった。期間限定ね…ん?……妊娠しなかったら終わり?ってことは、どっちかが妊娠したら、次回があるってことで良いんだよね?」
言葉尻を捉えて鼻息荒く、したり顔で頷く佑香さん。
「それは…」
「それは今、決めることじゃないと思う。」
希が言い淀んだところで俺が間髪入れずに言い切る。
「僕もそう思う。正直、今回の交換が終わったときに僕も、のんちゃんも気持ちが変わるかもしれないしね。もしかしたら、佑香だって変わるかもしれないよ?」
「私は変わらないと思うけど…まず、今回のことだよね。」
「妊娠を疑うといか、自覚するまでに時間がかかるから1か月とか2か月じゃ短いと思うんだけど、のんちゃんはどう思う?」
「俺は長期間続くのは嫌だよ。」
先に釘を刺しておく。
「うん、まぁ、1、2か月は短いのかな?でも…あんまり長いのもなぁ。」
希は佑香さんと俺の顔を見比べて考えている。
「妊娠しないときは、しないよねえ?慎ちゃん。」
「そうだね、僕たちは、もう1年過ぎたよね。」
三嶋さんがお猪口をクイッと煽りながら言う。
「だから、1年で良くない?」
佑香さんが俺と希を交互に見ながら『ね?』と同意を求めてくるのに対して希は唸りながら天井と俺の間に視線を彷徨わせる。
「ダメだよ、長すぎる。俺とのんちゃんの子作りはまだ、3、4か月しか経ってない。」
「じゃぁ、あと2か月くらい待つから、4月開始で6か月にしよう…ダメ?」
「う~ん…」
佑香さんに譲歩させている気はするけど、もう1つ条件をクリアさせたい。
「更にもう、2か月待って欲しい。そしたら6か月でも…いや、長いかな。」
「なんで2か月なの?」
「5月11日がのんちゃんの誕生日だから待って欲しい。その日は2人でお祝いをしたいんだよ。」
俺の言葉に希の顔が”ぱぁっ”とに明るくなり『うん!うん!』と頷いている。
「ああ~、でもなあ…そうすると、あたしの誕生日が7月20日なんだよね。それまで待つとか言うと…」
「タケ君の誕生日は8月8日だよ。」
「僕は10月だよ、ってなると、はじめられないよね。誕生日のお祝いは、また別に相談すれば良いでしょ?」
誕生日作戦は失敗のようだ。
「じゃあ、4月から6か月で良いよね?」
佑香さんが俺たちを見回しながら確認する。
「僕は良いよ。」
「ちょっと待って、6か月なのは良いけど…」
希が言葉を挟む。
「急に始めるんじゃなくて、4月に入って生理が終わってからにしようよ。妊娠してないのを確認してから始めよう?」
「そっちの方が良いね。”どっちの”赤ちゃんか分かるようにってことだね。」
『白黒はっきりさせよう』という言葉に胃に穴が開くような痛みが走る。
「それまでにのんちゃんか佑香さんが妊娠したら、当然、中止だよね?」
「それはそうだね…確認するまでもないんじゃない?」
佑香さんからは明らかに面白くなさそうな反応が返ってきた。
「でもさぁ、6か月でどっちも妊娠しなかったら、延長しない?」
「佑香、それはダメだよ、際限なく伸ばせるからね。」
三嶋さんが即応してくれる。
「のんちゃんか佑香さんが妊娠したら終わりで、長くても6か月、だよね?」
「妊娠したらって言うけど、母子手帳を貰ったら、だよね?」
自分の言葉でも変な汗が滲みだし、希が発した『母子手帳』という単語で更に胃が痛くなる。
「それで、即終了にする?」
対する三嶋さんの口調は軽い。
「母子手帳を貰った翌月末にしようよ。妊娠してない方にもう1回、受精チャンスをあげよう、ね?のんちゃん。」
「1回、1回だけだよ。6か月で我慢してくれる佑香さんに最大の譲歩として翌月末まで…それで終了して欲しい。」
胃の辺りを擦りながら声を出す。
「まぁ、良いよ、分かった。西尾さんが譲歩できる限界なのかな。じゃあ、今回は…」
・4月は生理が終わったらエッチ禁止
・2人とも生理が終わったら夫婦交換開始、10月末終了
・ただし、どちらかが妊娠して母子手帳を貰ったら、翌月末に終了
・前回と同じように希が三嶋宅、佑香さんが西尾宅で生活する
何か迷うことがあったら4人で相談して決めることになった。

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